海賊b

□冴えた冬の
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『クザンさんの季節って感じですね。』

「うーん、寒いなァ。」



ちらほらと舞い落ちる雪を見つめながら、くまちゃんは手のひらで吐息を包み込む。指の隙間からは白い息が溢れ出る。



最近は仕事が多く、いつもフラフラしているおれも、監禁されたように執務室に篭りっきりだった。

それを見かねたくまちゃんが息抜きを兼ねて、今日の仕事を海軍本部から少し離れた冬島への査察に変更してくれたのだ。

まあ、表向きは仕事。真面目なくまちゃんは、暖房の効いた部屋でぬくぬくと寝ていたおれを捕まえ、雪降る寒さの中、現地視察のために島を練り歩いていた。



『よし、次はこの島の支部の補強工事の状況ですね。海軍専属の腕の立つ大工を派遣しているので、何の問題もないと思いますが・・・一応見ておきましょう。』

「くまちゃん。せっかくの慰安旅行だってのに、仕事ってこたァ無いだろ。」

『何を寝ぼけたこと言っているんですか。まずはお仕事優先ですよ!』



いったいどれくらいの距離を歩いたのだろう。冷たい空気に晒された彼女の鼻と頬は、ほんのりと赤く染まっていた。



『っくしゅん!』



ジャケットを羽織っただけのおれとは違い、くまちゃんはニット帽、マフラー、手袋、海軍の厚手のアウターと、かなり暖かそうな格好だ。

おれはヒエヒエの実の能力もあり寒さには少しばかり強い。

極寒とは言わずとも、氷点下の気温と降り出した雪は、彼女の華奢な身体には十分に堪えるのだろう。



「くまちゃん、これ、着る?」



自分が着ているストライプ柄のジャケットの襟を摘む。



『ダメですよ、クザンさんが風邪ひいちゃいます。』



ふふ、と笑う彼女は、寒さのせいで赤く染まった鼻を、ずず、と鳴らした。



「遠慮しなさんな。おれは寒さには強い方なんだし。ほら。」

『え、あ、ありがとうございます。』



手早くジャケットを脱ぎ、くまちゃんの肩に掛けてやったところで、自分の行動がありきたりなドラマのワンシーンのように思えた。

いい歳したオッサンが、青春ラブストーリーのような雰囲気を醸し出している。なんて滑稽だ。

途端に気恥ずかしくなり、自分の耳がほのかに熱くなるのを感じた。



『・・・クザさんの匂いが、する。』

「え、」

『なんだか、包まれているみたいです。』



ジャケットを肩に掛けて、くしゃりと微笑む彼女と目が合った。



『さ、さあ、早くお仕事済ませて、港のカフェでお昼にしましょう!』



勢い良く歩き始めたくまちゃんを見れば、彼女もまた耳を真っ赤に染め、右手でジャケットを握りしめていた。



(きっとそれは、寒さのせい。)

冴えた冬の情景






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