-似た者同士-

□変化
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「もっと〜〜」

「このままだと遅くなんだよ。今日じゃなくても見れるだろが」


徹平は腕の中でじたばたする俊を気にせず、駅へ向かう道を歩いていった。







(人多いな……。やっぱ休みだからか)


ようやく駅にたどり着いた徹平と俊だが、ここでもひとつ、問題が起きた。


それは切符を買おうとした時のことだった。



「たしか370円だったな……。ほら、一旦降りろ」


徹平は切符を買うために、抱いた俊を下ろそうとした。しかし。


「やぁ!……」


俊は徹平のTシャツの袖を掴んで、なかなか離そうとしなかった。それどころか、何かから隠れるように、顔を徹平のシャツに押し付けている。


「だ〜もう暑苦しいな!なんだってんだよ!」

「う〜、いっぱいやだ〜……」


イライラが滲み出る徹平の言葉に、俊は声を震わせながら反応した。
声だけでなく身体まで震わせ、徹平の肩から改札の方を見ては、すぐに目を背ける俊の行動に、徹平はあることを思い出す。


「そういえば……。
――もしかして、この人の集まりが恐いのか?」


徹平の問いに、俊は何度も首を縦に振った。見知らぬ人に慣れていない俊にとって、多くの人の波はそれこそ恐怖の対象だ。


「だったら帰るか?俺は行くけど」

「……やだ、いく」

「どっちだよ……」


徹平は仕方なく、俊を抱いたままなんとか切符を買い終えると、改札に向け歩みを進める。改札が近づくにつれて俊の手の力も増していく。


(しょうがねえ、か)


徹平は俊を抱きなおすと、顔を押し付けてくる俊の頭を不器用に撫で続けた。

それで少しは安心したのか、電車に乗る頃には、座席に座る徹平の肩越しに、顔を上げて窓の外の風景を眺められる程には慣れたようだった。




※※※※※※※※※※※※


「ここ?」

「そ。てかお前にはつまんねえと思うけどなあ……」

電車に揺られること40分と少し。
明治の時代から同じ場所に残る、富士の森美術館がそこにはある。歴史を感じさせる建物のデザインは、それ自体が美術品のように思えるほどだ。



「いいか?ちゃんと静かにすんだぞ?」


美術館の入口で、徹平はしゃがみ込んで俊に念をおした。俊は小さな人差し指を立てると、それを口の前に持って行った。


「し〜、なの?」

「静かに出来るなら、いい子だな」


そう言って、徹平は俊の手を取った。
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