-似た者同士-
□新入り
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ここは、様々な事情で親元を離れざるを得なくなった子供たちを引き取り、育てる家、『もんじゅの家』。現在は3歳から18歳まで、15人ほどが暮らしている。
徹平も、とある事情で親と離れ、ここで生活している。もう10年になるだろうか。
「ただいま」
徹平が玄関を開けると、子供たちの嬌声が飛び出してきた。徹平はひとつため息をつくと、家の中に足を踏み入れた。
玄関から入ったところは、すぐに遊び場になっており、テレビやゲーム、そのほかにも遊び道具が揃えられている。もともとはリビングだったのだが、子供たちが占領してしまったらしい。
そこでは小学生くらいの子供たちがテレビゲームに勤しんでいた。徹平はそれを横目に、自分の部屋へと続く廊下を歩いていく。
夕飯までは昼寝でもしていよう。――そんな徹平の考えは、しかし阻まれた。自分の部屋の前まで来たところで、背後から自分の名前を呼ばれたからだ。
「やっと帰ってきおったか」
「チッ……なんの用だよ、ジジイ」
振り向いて、徹平は小さく舌打ちした。そこには徹平が1番苦手な人物――ここ、『もんじゅの家』の管理人、村野重蔵が立っていたからだ。
「ふん、お前に関係ある用事だ。鞄置いたらわしの部屋に来い」
それだけ言うと、重蔵は自分の部屋に入っていった。
(クソめんどくせぇ……)
そう思いながらも、徹平は部屋に鞄を放り入れると、重蔵の部屋の前まで来た。そしてその部屋の扉を、ノックも無しにそのまま開けた。
部屋の中には重蔵と、もう1人、小さな男の子がいた。見る限り、まだ小学校にも上がっていない年齢のようだ。
「全く、ノックくらいせんか。」
重蔵は呆れ顔で徹平のことを見ると、男の子に注がれる徹平の視線に気付いた。
「……そいつは?」
「ああ、この子か。この子は南野俊くんだ。今日からうちで預かることになった。――お前を呼んだのも、この子に関係があってな」
重蔵は俊を自分の前に出した。どうやらかなりの人見知りのようで、常に俯きがちでその表情を窺い知ることは難しい。
しかし、俊の顔を見た瞬間、徹平の脳裏にある顔が唐突に浮かんできた。同時に頭がズキンと痛む。
「……それで、用事ってのは?」
徹平は頭の痛みを気取られないようにしながら、重蔵に質問した。
「簡単な事だ」
重蔵は俊をチラリと見て、続ける。