-似た者同士-
□新入り
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――人と仲良くするのは、得意だった。
誰とでも話せば仲良くなれたし、友達と遊んでいれば嫌なことは忘れることも出来た。
弟の面倒もちゃんと見ていたし、お兄ちゃんとしての自分を嬉しく思っていた。
人と仲良くすれば、自分と他人との繋がりを保てば、これからも楽しい日々を送ることが出来ると思っていた。
あんなことが、起こるまでは。
※※※※※※※※※※※※
「……の、……らの、起きろ村野!」
気持ちの良い5月の昼下がり。天気良好、そして窓側の席。まさに眠気を誘発するシチュエーション。
そんなシチュエーションで気持ち良く眠りに体を預けていた村野徹平は、突然の怒号に身体をビクッと震わせた。後ろに流した金髪がふわりと揺れる。
ゆっくりと顔を上げると、教卓に手をついた担任教師と目が合った。
「やっと起きたな……。まあいい、35ページの5行目から読んで、日本語訳してくれ」
徹平は今まで自分が突っ伏していた机に目を向ける。そこにあったのは、数学の教科書。少なくとも、古典の教科書ではなかった。
「えっと……、わかりません」
「全く……。仕方ない、田口。同じところ訳してくれ」
はい、という返事の後に、前の席に座っている女子が質問に答えていく。徹平はそれを確認すると、再び眠りの世界へと落ちていった……。
「おら、起きろ」
ゴンッという鈍い音と一緒に、徹平の身体に軽い衝撃が走った。徹平が目を覚ますと、見覚えのある顔が立っていた。
「お、もう授業終わったか」
「とっくだよ。帰ろうぜ」
徹平は、立ち上がると自分の鞄を肩にかけた。徹平を起こしたのは清水遊馬(アスマ)。その風貌と噂のせいで避けられがちな徹平の、数少ない友人の1人である。
「それでさ、そのバイトが一緒の女の子がさ〜……」
「ほうほう」
帰り道、2人が話すことは取るに足らないことばかりだ。それでも、話のネタは尽きない。
徹平の家の前まで来ると、2人は明日の待ち合わせをして別れた。途端に、徹平の表情が曇る。その表情のまま、徹平は自分の『家』を見た。
児童福祉施設――いや、一般には孤児院と呼ばれる自分の『家』を。