短編集

□僕の日常
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「ただいま〜!」

「はーい、お帰りなさい」


僕が玄関のドアを開けてただいまを言うと、料理をしているんだろう、いい匂いと一緒にお母さんの返事が飛んできた。リビングのソファにランドセルを置いて、僕はいつものようにキッチンで待つお母さんのところに向かう。


「おかえり、ひろくん。今日はどうだった?」


大好きな笑顔で聞かれると、どうしても嘘はつけなくなっちゃう。少し恥ずかしいけれど、今日の『失敗』を話さなきゃ。


「算数の時間とね、あと……帰り道で、やっちゃった」

「あら、それじゃあ気持ち悪かったでしょ?早く着替えなきゃ」


お母さんは、部屋の隅にある袋から僕のパンツを一枚取り出すと、僕の前で膝をついた。そしてズボンに指を掛けて、スルスルと下ろしていく。


「はい、今度はパンツね」


言葉通り、次にお母さんは僕の布パンツを脱がせてくれた。さらに、ピリピリと小さな音を立ててパンツに貼付けていた物を剥がし、重さを計るように上下に動かした。


「ひろくん、先におトイレ行ってこよっか」

「はーい」


僕はお母さんの手をぎゅっと握って、引かれるままトイレへと連れていかれる。トイレに座ると、帰り道の『失敗』の後でも残っていたおしっこが、チョロチョロと流れ出た。お母さんの顔を見ると、とっても嬉しそうな顔をしていて、僕もトイレでおしっこが出来た達成感で笑顔になる。


「あんまりおもらしパッド濡れてなかったから、やっぱり貯まってたか。ひろくん、偉いぞ〜!トイレで出来たね〜!」

「うん!」


トイレから降りた僕の頬っぺたを、お母さんがぐりぐりと手の平でさすってくれる。それが気持ち良くて、僕はお母さんの足に抱きついた。もう四年生なのにってお友達には笑われそうだけど、そんなのどうでもいいんだ。


「さ、お股もお尻もきれいにして、新しいパンツ穿こうね」


さっきの場所まで戻ってきて、お母さんは赤ちゃんのお尻拭きで、ちんちんやお尻を優しく拭いてくれた。それが終わると、僕のパンツを持って、いたずらっぽく笑う。


「ひろくん、自分で穿く?」


こんな顔をするとき、お母さんは僕がどんな返事をするか分かってるんだ。いつもそうなんだから。


「お母さん、やって〜」

「ふふっ。はいはい、それじゃあお母さんの肩に手を置いてね」


……やっぱり、僕がそう言うって分かってたみたい。
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