短編集

□指定教育法―美濃部 亜樹の場合―
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指定教育法――それは4年前、可決された。


指定教育法とは、未成年者の学力や生活態度が、その年代の標準と著しく掛け離れていると判断された場合、妥当と考えられるレベルの教育機関へと年齢を問わず入園・入学させる制度である。判断を下すのは国であり、厳正な審査の後、様々な手段を用いて教育機関を用意するのだ。


この制度は、2015年を過ぎた辺りから増加しだした少年犯罪や非行に対抗するために、既に存在していた未成年者への麻薬取締法を雛形に制定された。罪を犯したり、その他審査の対象になるような行動をした未成年者は、小学校や、酷い場合には幼稚園・保育園にまで戻されて、再教育を受けさせられるのである。

草案の段階では反対者も多かったが、少年犯罪の増加と凶悪化、そして安全な成長退行剤――服用者の身体を、望み通りの年齢まで引き下げることを可能にする魔法のような薬の開発により、そんな声も次第に減っていった。
そして、議論を呼んだ指定教育法の施行以降は、少年犯罪の発生件数は下降線を辿りはじめた。実際に法の執行を受けた者がいたということも理由の一つだが、指定教育法自体が、抑止力としての機能を果たしているという事実が、大きな理由だった。






さて、この指定教育法だが、適用されるのは実際の年齢と比べて著しくレベルが低い者だけではない。その逆も有り得るのだ。




――例えば年齢の割に、優秀過ぎる子供にも。
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