-翔馬と由香-

□ゆかちゃんとひーくん
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「うええぇぇ〜〜!!」

玄関のドアを開けた俺の耳に飛び込んできたのは、大音量の泣き声だった。俺はまたか、と頭をポリポリとかいてリビングへと歩を進めた。

「ただいま〜」
「あ、おかえりなさい。
――由香ちゃん、出ちゃったのはしょうがないから、もう泣かないの」
「だって、だってぇ〜……!!」

まず見えたのは、母さんに縋り付くように泣く由香の姿だった。そしてそのまま視線を下げていくと、ぐっしょりと濡れた由香のズボンが目に入る。

「ほら、濡れたまんまじゃ気持ち悪いでしょ?早くパンツとズボン取り替えよう?」
「……ヒック……うん……」

母さんはエプロンの裾で由香の涙を拭うと、パンツごとズボンを脱がした。泣き止み始めた由香は、完全に身体を母さんに預けていた。

「ねえ由香ちゃん、今日はもうおむつにしよっか」
「…………やだ」

母さんはそんな提案をする。しかし由香は母さんの肩に顔をこすりつけるかのように首を横に振った。

「ゆか、パンツだもん。ひーくんとおんなじだもん!」


頑なにおむつを履こうとしない由香。母さんはため息をついて新しいパンツとズボンを履かせると、今度は雑巾を持ってトイレへと続くドアを開けた。よく見ると、点々とドアの先から水滴が由香の元まで続いているのがわかる。

「今日はもうちょっとだったんだな」
「うん……。ちゃんとトイレでおしっこするんだもん」

俺が頭を撫でると、落ち込んではいるものの、由香は真剣な目で、そう宣言した。



――今までパンツにしたいだなんてほとんど言わなかった由香。そんな由香が急にパンツにすると言いだしたのは、3日程前のことだった。

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