05/04の日記

19:23
照れ屋な彼のくれたチケット/風荒SS 荒井くん誕生日話
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時期はどうした 笑。

そういえば荒井くんのバースデー話書いたの初めてだな…
ごめんなおめでとう昭二…!!!


母の日プレゼントコーナーで
手作りチケットっていうのを見て
おもしろいな〜と思ったので書きました。

pixivのほうにも最近かいたSS載せたんですが、
意外とちょこちょこ閲覧あってうれしい〜!!

このエネルギーでまた何か書けます感謝しかない!!

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「誕生日おめでとう、荒井くん」

その言葉と共に手渡されたのは、
どうやら手製の、ちょっとした紙の束だった。

金属製と思われる(だが確信は持てない)リングで束ねられた、
やや大きめで長細い単語帳のようなイメージのソレに、

「… なんですか、これ」

ありがとうございます、という言葉より先に、純粋な疑問が出てしまう。


いえ、嬉しかったのは本当なんです。

風間さんに誕生日を祝ってもらえるというのは
あまり期待していなかったので、
というか想定していなかったというか、
風間さんでもそういう気遣いができたんですね、という驚きや
ひとの誕生日を祝うという概念を
人並みにお持ちだったんですね、といった発見が勝ってしまったというだけで。

いえそれはそうとして、
あまりにも…その。


渡されたプレゼントが、
異形のデザインだったので。


「何って、チケットだよ。
僕にやってほしいことを
お願いできる券。

他の人にならお金を取るとこだけど、
他ならぬ君のためだからね、サービスしようじゃないか」

風間さんはそう説明し、ニッコリする。

「はぁ… それはどうも」

受け取った僕はやや呆然として、
凝視していた奇抜な柄の表紙を
導かれるようにめくる。

生乾きの絵の具のような、
ヌチャリとした手ごたえがした。


細長く切った厚手の紙に、
「荒井くん専用チケット」
と書かれた中表紙をめくると、


・肩たたき券 (一回5分)、

・鼻歌に合いの手をつけてあげる券
(フルコーラス一曲分)、

・高級霊コックリさん忖度券
(コインはご用意ください)、

・コンビニの肉まんを
半分わけてもらえる券(あんまん可)、

…といった調子で、
ありがたいんだかそうじゃないんだか
よくわからない文面が書き連ねられている。

(毎ページクレヨンか何かで
しっかりと独特なカラーリングに仕上げてあった)


僕がどう言葉を返していいものか
はかりかねている間、

「いやあ、やっぱり悩んじゃったよ。 きみってあんまり物欲ないしさ?
だったら僕があげられるモノはそう… スペシャルな体験だと思ってね! この風間さんとのさ!」

風間さんはどこから来るのか大層な自信で得意げだった。
褒めて褒めて、と言わんばかりである。

「…とりあえず、ありがとうございます」
「どういたしまして!」

僕は律儀にもお礼を言った。


いや、いいんです。
あなたからお祝いをもらえるなんて、
それだけで充分想定外でしたから。


小さい子のお母さんてもしかして
こういう気持ちなんだろうか…と、
そんな失礼なことが一瞬頭をよぎったが、
多分全然こんなモノじゃないんだろうな。
あまりにもかけ離れている気がする。
むしろ比べてしまって申し訳ありません。


僕は見知らぬ誰かへの謝罪の気持ちと、
得も言われぬ虚脱感で、
そのプレゼントを胸ポケットにしまった。

…カタチが大事。 うん。

そう自分に言い聞かせ、
引き続きプレゼント選びに苦心したという風間さんの得意げなエピソードを聞き流す。

…帰ったら母さんがケーキを焼いてくれる。
父さんがきっと例年通り図書カードをくれる、
そう帰宅後の自分を励まして。


「期限は特にないからさ。
まあでも早めに使っておくれよ。
もったいないとは思うだろうけどさ」

こういう時の風間さんはいやに優しい。
全く悪ふざけの意志はないのだろうと思う。
が、それがかえってタチが悪かった。

「…ありがたく、使わせてもらいますね、いずれ」

僕が悪態をつけずに
そう言うしかなくなるので。


最高の記念日を演出できた、と
最後までご機嫌な風間さんと別れて帰宅し、
念願のいつも通りの誕生祝いを家族と楽しんだあと
(今年のケーキはいやに美味しく感じられた)、

眠る前になって受け取ったプレゼントにもう一度手を伸ばす。

なんだか最初にもらった時と
表紙のデザインが変わったように見えたが、きっと気のせいだろう。
疲れているに違いない。


僕は軽く首を振って、そしてため息をついてから、ページをめくる。

続々と出てくる微妙な内容のチケット。


・いたいのいたいの飛んでけフルパワーver.
(怪我の大きさに合わせて複数回可)

・留守番電話の応答メッセージ収録
(内容は選べません)

・僕の家のお風呂の入浴剤を選ぶ権利
(持ち込み歓迎)

・デパ地下試食ツアー
(最大3周まで 変装つき)





彼にとって僕って一体なんなんだろう。

そんな素朴な疑問が自然と脳裏に浮かんだ。

彼はコレをどういうつもりで作って、あまつさえ手渡してきたんだろうか。
よりによって誕生祝いと称してまで。

ちょっとした頭痛やら眩暈がしたけれど、
懲りずにページをめくっていくうち、
僕は目を見張った。


嫌に分厚いチケットの最後のほうに、

・僕を一日好きにできる券

・一緒に映画を観てあげる券

・スキンシップ許可証

・添い寝券 腕枕つき


そんな内容のものが混じっていた。
まるで隠すように。


今までのおちゃらけた悪趣味でカラフルなチケットとは
デザインも書体も違う。

少し緊張したように震えた筆跡で、
綺麗な色紙に奥ゆかしい文字が書かれている。

僕は言葉も出ないまま、ただページをめくっていった。

そして最後の一枚に、


・風間望と一生一緒にいられる券

(期限 無期限)


という文字を見つけたとき、
僕は思いがけず泣いてしまった。



「… ほんと。
ホント馬鹿ですね、風間さん」

チケットにこぼれた涙を指で撫でながら、
僕は笑った。

…あれで案外、照れ屋だからな、あの人は。


多分大多数のどうでもいい内容のチケットは、照れ隠しだったのだと思う。

最後の一枚のコレを誤魔化すために、
どんどん分厚くなっていったであろうチケットの束。

それを思うとこのプレゼントが
まるで宝物のように思えた。

両手にとって、抱きしめる。



明日風間さんに会ったら、
真っ先にこのチケットを手渡そう。

おっチケット使うの? どれどれ、最初の一枚は?

そう言っておどける彼に、突きつけてあげるんだ。


あなたの一生を僕にください。

ぽかんとした彼の顔を想像する。
僕はにっこりして言葉を続ける。


そして、お礼にコレをあげます。
…有効期限はありませんけど、
できたらお早めに使ってください。


そう言って、僕が用意するたった一枚きりのチケットを、押しつけてやるんだ。


──荒井昭二と一生一緒にいられる券。


期限、無期限。



☆コメント☆
[楓] 05-08 18:44 削除
おめでたいですね!

[楓] 05-08 20:09 削除
知ってるドラゴンボールのゲームは何ですか?
私はレイブラ、ヒーローズ、ファイターズ、フュージョンズ、ゼノバース、ゼノバース2、カカロット、ヒーローズ、ドッカンバトル。
好きなケロロ軍曹の映画は何ですか?天空のケロロ対ケロロです。

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01:03
僕の背中には羽がある/風荒SS
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タイトルはあの曲です(世代)。
聴いてたらでけた。

スンバラ捏造楽しくてやめられない。
設定は数年後、一緒に住んでる世界線です。
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「荒井くん、僕の故郷に来ないかい」

風間さんは相変わらず前触れも突拍子もない話を、
あろうことか大真面目な顔で言い放った。

「… 行かないです」
「なぜ!」

不意打ちの勢いに気圧されつつ、それでも僕はしっかりと断った。
風間さんは力一杯理由を訊ねる。

「いや、だってあなたの故郷って、
…アレですよね、ええと」
「スンバラリア」

食い気味に答える風間さん。
僕の脳はなぜかこの単語を覚えることを拒み続ける。

「… いわゆる里帰りにしても。
宇宙旅行はただの地球人の僕には荷が重すぎます」


風間望は宇宙人だ。

その事実はいつか聞かされて、
一応納得というか、受け入れてはいる。

随分長いこと頑なに僕に黙っていた癖に、
いざバラしてしまってからは
こちらがビックリするくらい平然と異世界のテクノロジーアイテムを使うようになったり、
いつか悪霊を祓ったあの謎の力も、
隙あらばフルスロットルで活躍している。

もう少し忍んでほしい、と思うくらいに、
秘密を打ち明けてからの彼は
絶好調に好き勝手に、地球人の仮の姿を捨てていた。

それでも、一応は僕以外の人間の前では使わないように気を遣ってはいるらしいが、

醤油差しを取るために食卓に伸びた真緑の触手を見るたびに、
もう少し危機感というか、なんというか、
そういう意識を持ってほしい、と思うのだが。


風間さんはうーんと唸った。

「そんなに気をつかうことないと思うんだけどなぁ。
酸素だってあるし、僕用の小型宇宙船でも
ほんの小一時間で向こうに着けるのに。快適だよ」

「… そんな近いんですか?」
「まあ距離はそうでもないけど。
そこはまあ、我がスンバラリアの科学力の賜物だね」

聞けば高校の初めの頃は月一で向こうへ顔を出していたらしい。
随分な気軽さだ。

こんなところでも地球人とスンなんとか星人との認識の違いを思い知る。

「今度僕の上司である長官の
就任38フモの記念式典があるんだよ。
僕にとっては親代わりのような人だし、ぜひ君のことも紹介したいと思ってね」
「はあ」

聞きなれない単位のイベントに戸惑いつつ、
風間さんの親代わり、というその長官とやらに会うことになる、というのも
また別ベクトルで気がかりだった。


風間さんは戦争孤児だったという話もかつて少し聞いている。
幼い頃に軍に拾われ、そこで軍人として育てられ、私生活は二の次だったと。
それでもそこで実の親のように、
上官たちには可愛がってもらった、という話も。

家族というものの存在が希薄だった風間さん。

擬態スーツによる地球人の姿の彼に
人間の両親はもちろんいないので、
そんな気配があるはずがなかったのだ。

それでも。

故郷にいるというその長官は、やはり彼にとっては大事な存在なのだと分かる。

いつもの無駄な格好つけのポーズとは違う、
年相応に幼い笑みを浮かべる彼の姿を僕は黙って見つめた。


「とってもいい人でね。まあ皆そうなんだけど。
軍の訓練所にいた教官たちには体術やプログラミングも習ったし、
武器の扱いに軍事法にサバイバル知識に
未知の食材をおいしく食べるコツなんてのも…
? 荒井くん、どうかした? 」

「風間さん」

僕はひとつ決心した。


「週末なら、空けられます。
いつですか、その催しって」


風間さんはしばらくポカンとして僕を見ていた。
それからようやく、言葉の意味を理解したらしく大きく破顔して、
僕の体を両手でしっかりと抱きしめた。


一夜経って今更ながら、
自分のしてしまった選択が
僕の人生でだいぶ大きな過渡期になってしまうのではと、
早まったかと、頭を抱えたが。

いや。
いつかこういう場面が来たら
そうするしかなかったのだと
かぶりを振って自分に言い聞かせる。


風間さんと離れ離れになるくらいなら、
僕は一緒に生きる道を選びたいんです。

おそらく風間さんが思う以上に、僕は風間さんに惚れているのだ。
悔しいけれど、もう認めざるを得なかった。

あなたのいない世界なんて、
面白くもなんともありません。

あなたの起こすはた迷惑で愉快で奇妙な出来事を、
僕はこれからもあなたの側で体験していたい。

そのためだったら、
地球での生活を捨てるくらい許容範囲です。


恥も外聞も取り去ってしまえば、
それが紛れもない本心だった。

もちろん悔しいと思う気持ちも、
同じくらいあるにはあるのだけれど。

そしてそうは言っても、
できれば地球での生活も今まで同様続いてほしいけれども。


でも宇宙かあ…と幾度となく思考を彷徨わせていると、
寝巻きにしているTシャツにスウェット姿の風間さんが
寝ぼけ眼のまま寝室から出てきた。

寝癖をつけて、よだれの跡を手でこすって。

「ん… おはよぉ、荒井くん」

だらしなく笑うその姿は、
やっぱりどう見てもそのへんにいる普通の人間だった。

「おはようございます。今日はえらくご機嫌ですね」
「うん、なんかすっごいイイ夢見ちゃってさぁ」

顔も洗っていない寝起きの顔のまま、ニコニコ笑っている。
内容を訊ねるまでもなく、

「荒井くんがね、僕の故郷で僕の花嫁さんになる夢。うふふ、ドレス姿綺麗だったなぁ」

いっそうだらしない笑みで、そんなことを抜かしている。


その光景が何故かありありと僕の脳裏にも映し出されて、
僕はソレがまさか正夢になってしまうのでは、と直感したが

「楽しみだねぇ、ハネムーンは定番だけど
土星の輪っかで流しそうめんコースかなぁ、やっぱり」

「… 」

すでに決まった宇宙行きを断るのは、すんでのところで思い留まった。


「…風間さん、確認しておきたいんですけど」
「うん? 何かな、僕の荒井くん」
嫌な予感がする。

「…顔見せだけですよね? その、長官さんや、その他の同胞の方と」

「まあうん、それはまあ、ねっ?
隙あらば、というか、あわよくば、というか」

「…改めて、今後のプランについてお聞きしていいですか、
勝手に話が数光年先に行ってるっぽいので」

「お、前向きだねぇ荒井くん!
まずは僕と君のための惑星をふたつみっつ買って、子供たちでチームを作って」
「待て。 いきなり待て、なんですかそのフルスピード」

浮かれている風間さんは
僕が思うよりだいぶ僕のことを好きなようだった。


とはいえ僕の趣向をまるきり無視した
あまりにも壮大な計画に待ったをかけるも、

「まあ場所はどこでも構わないよ。
君が一緒なら、僕はどこでだって幸せになれる。
それこそ、この宇宙のどこでだってね」

そう言って屈託なく笑うので、


「…それは。 そう、ですね」

このまま。

この人の手を取ったまま、
流れに任せて宇宙をゆらゆらたゆたうのも、
それはそれでアリかも知れない、
と思ってしまった。

そう思わせてしまうくらい、
つないだ風間さんの手は温かかった。



☆コメント☆
[楓] 05-08 18:40 削除
この作品も凄く素敵です!ケロロ軍曹は知ってるですか?私はプタタ・メケケ・ギルル・ドクク推し。知ってるアニメは何ですか?

[楓] 05-08 20:04 削除
ポケモンsv、ラグナドール、大神のゲームは知ってるですか?

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