05/03の日記

04:50
懐かしい誘い/風荒SS
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同窓会?のお誘いのお話。

なんていうんだろう。 あの時のメンツで
数年ぶりに集まろうぜ!という話です。
後日談が書けるかあまり自信がないです…笑
とりあえず数年後の風荒。

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坂上君から数年ぶりに連絡があり、
新聞部取材当時の七名で集まろうということだった。

「その話ってのぞ… …風間さんにもう話しましたか?」

「? え、いいえ。 三年生のみなさんにはまだです。 あ、当時の、ですけど」


電話口の坂上君は特に追求してこなかった。
…危なかった。

風間さん、と彼を呼ぶのは随分久しぶりな気がした。

急激に出会った当初の記憶が蘇ってくる。


僕も大人気なかったっけ、あの頃は。
怪談話の会で茶番を披露するヘラヘラした上級生。
僕は最初ポカンとして聞いていて、
その後なんだか無性に腹が立って。


その場の全員が殴りかかろうとする僕と彼を
慌てて引き剥がして押さえ込んで、
なんだかうやむやのまま話は続いて…


僕は思わず吹き出してしまう。
連絡事項を告げていた坂上君が
どうかしましたか、と狼狽える。
僕は何でもないんです、と謝って、
そして。

「わかりました。では当日を楽しみにしています」

そう言って通話を切った。


ひとつ息をつく。

…ああ。随分久しぶりだ。
あの頃のことを思い出すのは。



「電話?」

風呂場のドアから出てきた彼が、
タオルで髪を拭きながら聞いてきた。

「はい。誰からだと思います?」

僕は少しにやけてしまうのを止められなかった。

「えー僕も知ってる相手ってこと?
きみの交友関係って意外と多いからなぁ…
あ、でも健在なのはそんなでも」
「3、2、」
「え、ちょっとカウントダウンはや」


望さんは上半身は裸のまま、
パジャマにしている七分丈のズボン姿で
フローリングの床に座った。

僕は氷の入った麦茶を2人分グラスに注いで、テーブルに置く。


「で、誰なの、結局」

望さんはクイズを諦めたようだ。
まあほとんどノーヒントなので致し方ない。
そもそも彼はあまり頭を使う習慣がないし。

「多分、もうすぐあなたにもかかってきますよ」

「ええ? なにそれ予言? …スマホどこ置いたっけ」

充電器に挿しっぱなしのそれを手に取って、
「あ、着歴… 」

表示される画面の名前を見て、
やっと合点がいったようだった。


「あれ、懐かし〜! えっ、しょーじくんにもかかってきたの? 坂上くんから?」

無邪気に声を上げる。
彼は僕をひらがな表記っぽい下の名前で呼ぶ。
能天気なその響きにもいい加減慣れてしまった。


「はい。ふふふ、随分ぶりですけど相変わらずで安心しましたよ」

「えー、進歩のないやつだなぁ。 でもなんの用事? あの時のメンツに掛けてきてるってこと?」

「みたいです。ちょっとした同窓会のようなものでしょうか」

「同窓会って言うのコレ? 学年ちがうのに…
まあほかの言い方でしっくりくるの思いつかないけど」

「同窓、っていうのは同じ学校、という意味なのでその点はセーフでしょう」

あ、そうなんだ、とさほど気にもとめず、望さんはディスプレイの名前を眺めている。


「しょーじくんもう坂上と話したんだろ?
同窓会、行くの?」

僕はちょっと意外だった。

望さんは真っ先にそういうイベント参加には
名乗りを挙げそうなタイプなのに。

「行かないんですか?」
「君が行くんなら行く」

当然のようにそう言って、僕の答えを待っていた。

僕は少し言葉につまって、

「… 行くつもりだと返事しましたよ」

そう答えた。


「じゃあ僕も行く。いつ?」
「月末の日曜かその次って言ってましたね」

「そっか。日曜日なら空いてるや。問題ないね」

スケジュールを確認するまでもなかった。

僕らが揃ってどこかへ出かけるのもいつも日曜日だ。ほとんど暗黙の了解となっている。

お互いがお互いのために空けておく、日曜日。


僕はさっきからじわじわと胸が熱くなっていて、
多分顔も赤くなっているのに気付かれないように、
麦茶のおかわりを注ぎに立ち上がった。


…いつも、率先して先に進んでしまうのはあなたで。
僕はいつもそれを追いかけている、
そんな気がしていた。

置いていかれないように、必死で後を追って。

背中ばかり見ているような、
そんな気持ちでいつもいたのに。


── 君が行くんなら行く。


その言葉が、彼の口から出るのはとても意外な気がして、

そしてそれが、今になって僕にはとても嬉しかったことに気づいてしまって。


僕は、僕たちはこの数年でだいぶ変わったんだろうか。
関係性は随分、思いがけないほうに転がっていった気がするけれど。



「あ、かかってきた! はいもしもし、カッコマンです!」
再びの着信にすぐさまそう名乗り、
出会い頭の元後輩を困惑させる望さん。

そういうところは相変わらずで笑う。


「ふっふ、君の言いたいことは分かっているよ、
なにしろ僕はそんじょそこらの一般人とは違うからね! 月末の日曜なら空いているよ!!」

先回りと先走りでますます坂上君のペースを乱していく様子が聞こえてきて、
坂上君を気の毒だと思う一方、
やはり彼の身勝手さに笑ってしまう。

吹き出して声が向こうに聞こえないよう、
僕は僕で肩を震わせ声を堪えるのに必死だった。


しばらく雑談している様子の彼の様子を
キッチンからそっと伺いながら、

「ほいほい。んじゃまた。よろしくねえ」

通話を終了した彼の姿を見届けると、
ようやく側へ戻り尋ねた。なるべく平静を装っ
て。


「どうでした」

「いやあ、本当に相変わらずだったね! あの調子じゃ彼、高一の時からまるで進歩ないんじゃない」
「ソレをあなたが言いますか」

望さんは楽しそうだった。

「岩下や新堂も来るって。新堂はともかく、岩下は意外だなぁ。 馴れ合いっぽいノリ苦手そう。っていうか軽蔑してそう」

「ああ… まあ、想像しやすいですね」

思い出す姿は高校三年の姿のままだ。
あの時の七人は、今はどうなっているんだろう。


「ま、そもそもあの集まりに来るくらいには
付き合いも興味もあったのかもね。
逆鱗に触れないようにしないと。久々に緊張するなぁ」
言いながら緊張どころか少し身震いしている。

「当時は坂上君がその犠牲になってくれてましたけど、矛先は向きそうですよね、望さんの人間性では」

「きみ、ちょっと今のどういう意味かな。
僕のような完璧超人に」
「今自分で緊張するって言ってたじゃないですか」
「あげあしとらない!」

それから、話は当時の面々へと移る。


「あと一年の女の子と。きみの同学年のトイレの彼も来るみたいだね。全員集合じゃないか」

「福沢さんと細田さんですね。卒業後時間も経ってるのに、よく集まりましたね」

「ま、この僕がつかまれば後はさほど苦労しないだろうね。なにしろ僕は忙しいからさ」

「(スルー) 日野さんは来ないんでしょうか?
一応発起人ですし、そもそも彼経由で呼び出された訳ですから」

「あー、どうだろうね?
日野は時々連絡くるよ。僕が宇宙人ってハナシ、 当時チラッとこぼしたのまだ忘れてないっぽいんだよね」

「… どこまで話したんですか」

望さんが宇宙人である話は、
僕は高校卒業直前に聞かされている。

荒唐無稽だと思いつつ、
納得がいく部分もあるので僕は受け入れている。
というか色々、目撃しているし。

困惑しつつも、実際変な人だから。
異星人であるほうがよほどしっくりくる。


望さんは飲みかけの麦茶を一気にあおると、
言葉を繋いだ。

「いや、本気にしてはいないにしろ、って感じだけどさ。ジャーナリスト気質ってやつなんだろうけど… 隙あらばネタを掴みたい、って気じゃないかな」
「… ボロ出さないでくださいよ、コレ以上」

「やーまあ、気をつけるよ。 …うん?」
「日野さんって今は新聞記者なんでしたっけ」

望さんが皮肉に気付かぬうちに、話題を戻す。


「そう聞いてる。高校の頃から顔は広かったしなあ、うまくやってるんじゃない?」

「新堂さんは体育教師を目指してるんでしたっけ」
「あー、ね。うっかり小学校の教職取りに行っちゃって
全教科教えるのツラい、って言ってたし
高校あたりの資格に切り替えんじゃない?
でも新堂が音楽とか家庭科教えてるの想像したら面白いな」

僕も教職の道は考えたが、
教育実習が必須かつ憂鬱だったので見送った。

新堂さんが似た道に行くつもりだったのは、
なんとなく嬉しいような、心配なような。


「…結構うっかりしてますよね、新堂さん」
「全然うっかりしてるよ、しょっちゅうだよ。
僕は要領いいから切り抜けるけどさ、
たいていサボってるの見つかって新堂だけ怒られてた」
「…巻き込まないであげてください」

かわいそうな新堂さん。


その後もそれぞれの面々の進路や思い出話などを
思いつくまま取り留めなく話し、

「楽しみだね。…ねえしょーじくん」
改めて僕のほうへと向き直る。
「なんですか」

「僕らがつきあってるってハナシ、どこまでだったら話していいのかな」

「………」

「おんなじ大学行って、そん時から今まで一緒に住んでること。
どこまでだったらセーフかしら」

僕は困ってしまった。


いつものふざけたような、
からかうような口調だったら、
「一切他言無用」
とだけ言って殴ってやれば済んだ。

けど、今の望さんは、
柔らかく微笑んで、そしてまあまあ真面目に悩んでいる。


「だってさ。多分話の流れでどこの大学いった、てなるじゃない? 今みたくさ。
そんで僕ら同じ大学で、最寄り駅も一緒でしょ。
突っ込まれたら慌てると思うんだよね」

だから今のうちに相談しとこうと思って。

「僕としてはバレてもまあ構わない。
大っぴらにしてみたい気持ちもあるしさ。
でも、」

望さんの大きな手が僕の手に重なった。


「せっかくの君との秘密を、今まで通り
僕らだけのモノにしておきたい、って気持ちもあるんだよねぇ」


「…」

手を握る。握り返す。



言いたい。みんなの前で。

言いたくない。二人だけの秘密にしていたい。


そのふたつの相反する願いの中で揺れながら、


「… 誤魔化し方、今から考えておきましょうか」


「いいね、賛成」

望さんはニコッとして、そして。


「じゃ、堂々と秘密のコトしよっか」

「…調子に乗らないでください」


キスを受けながら、一応それだけ文句を言った。

何度か軽くじゃれるようなそれのあと、
望さんは鼻先をくっつけたままふふっと笑って、

「楽しみだね」

と小さく囁いて、僕も頷いた。


あの時の七人は、どう変わっているんだろうか。

僕と彼は、どう変わって見えるだろうか。


想像すると、むず痒いような、心地いいような、
でもきっと幸せな気持ちだった。

彼にこうして触れられている時に感じるそれに、
近い気がした。



☆コメント☆
[楓] 05-09 11:41 削除
YouTuberのたくっちとトランスフォーマープライムとヒプノシスマイクは知ってる?

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