03/01の日記
21:33
罪の代償/風荒SS
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こんばんは。もう三月ですね。一年はえええ!
風間誕もあるので、ぼちぼち絵かSS書き始めたいとおもいます。
荒井くんのお祝いSS書いたことないんだよなぁ・・・
そっちも元気あるときにかきたい
さて今回のお話は風間視点です。
デートすっぽかす話。わざとじゃないです。
荒井くんがかわいそうすぎるエンドになりそうだったので、慌てて路線変更。
後半のちょっと小悪魔な荒井くんは珍しいかも。
ていうかデートすっぽかしたの私。ごめんね愛花(ラブプラス)。
そしてそれをネタにしてかいたのがこのSSとか\(^q^)/
とんだクズ野郎ですね!(笑)
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時間と日付の感覚が曖昧だ。
昨日はやけに疲れていて、僕は制服のまま眠ってしまったようだった。
休日だったからよかった。いや、良くない。意識がハッキリすると、いっそ学校があったほうがマシだったことに気づいて愕然とする。
時計を二度見して、ケータイの日付を確認して、もういちど食い入るように時計を見る。
ありえない。 カーテンを引くと、すでに夕暮れ。
ありえないありえない。僕は声を漏らした。
「待ち合わせすっぽかしちゃった・・・」
昨日のこと。
珍しく優しげに微笑んだ荒井くんが、顎の下で両手を組みながら、
「明日、一緒にでかけたいところがあるんですが」
とすこしはにかんでいうものだから、僕は当然二つ返事をした。
可愛い恋人がこうしてデートを提案してくれるんだもの。オーケーして当然だよね。荒井くんがらみの予定しか入れてないわけだしさ。
「珍しいね、どこいきたいの?」
僕がファストフードのオレンジジュースをすすってたずねると、
荒井くんはさらにかわいらしく笑って、
「行ってからのお楽しみです」
とだけ言った。すごく楽しそうだった。
待ち合わせは本日、10時。 現在時刻、すでに6時間オーバー。
僕はなんか生きた心地がしなくなって、すがるような気持ちでケータイを開いた。
恐ろしいことに、一件の着信も入っていない。・・・どうしよう、この状態。いまだかつてなくピンチじゃない・・・?
うわぁ。どうしようどうしよう! 急にいろんな事考えちゃって慌てちゃって、
荒井くん待ちぼうけさせたとかドタキャンのうえ連絡なしとか、っていうかあんなに嬉しそうにしてたのに! さすがにもう待ってないよね? メールした方が良いかなぁ、あ、電話かな? でも・・・ うああ、こわい。音沙汰無いのがかえって怖い!
おろおろして、とりあえずケータイもって家を飛び出した。
ええと、待ち合わせは駅だけど、荒井くんちだったら距離はおなじくらいか。
僕って自転車乗れないし、住宅地だからタクシーもないよ! うわああん!
どっちにいこうか?
→待ち合わせの駅
荒井くんの自宅
なんて自問自答選択肢をカーソルうろうろさせてから、
昨日の笑顔がちらついて、気持ちが塞いで足が止まった。
道路の真ん中で立ちつくして、ケータイの発信ボタンを押す。
やけに長いコール音の後、ぷつりと応答モードに切り替わる。
つながった先に、荒井くんがいる。怒ってるだろうか、それとも泣いてる?
「もしもし」
低くかすれた小さな声。いつもとかわらないようで、全然違った。
いつもはもっと、生意気な元気さと毒気のある声。
今のこの声は衰弱して、絶望のどん底をのぞいてるみたいだった。
「ごめん、ごめんね・・・ 荒井くん」
言い訳とかいろいろ考えたけど、やっぱりそれしか言えなかった。僕はばかみたいにごめんね、ごめんねと繰り返した。喉が苦しい。胸が痛い。
「いまどこにいます?」
無感情な荒井くんの声。僕はあたりを見回して、家出てちょっとのところ、と答えた。
「でしたらそのまま僕の家へ来てください。お話したいことがあります」
それだけいうと、通話は途切れた。ツーツーという電子音。
荒井くん、自宅にいるのかな? ・・・だったらどんなにいいか。まだ駅にいたりしたら僕、泣いちゃうよ。申し訳なくてさ。
僕はとりあえず、ケータイを握って走り出した。心臓がどきどきいって苦しい。
荒井くん、僕のこと嫌いになっちゃっただろうか。なるよねぇ。だってこんなに長いこと・・・。 ううん、僕だったら嫌いになっちゃうかも。ああでもわかんない。荒井くんのこと嫌いになるなんて想像できない。嫌いになんてなれない。
でも荒井くんはどうなんだろう。やっぱり幻滅しちゃった?
仕方ない、よね。それだけ僕はひどいことをした。君を傷つけた。
嫌いになることで僕を罰してくれたらどんなに気が楽になるか。
許しを得られなくて当然なのだから。
だけどこれだけは信じて欲しい、君を傷つけるつもりなんて、本当に、これっぽっちも、かけらもそんなつもりはなかったんだよ。
夢中で走って、汗と涙が混じって体中どろどろになったころ、僕は目的の君の家にたどり着いた。
チャイムを押すのを、ためらう。けれどこれ以上君を待たせるのは嫌だから、
臆病な僕の心にむちをうって、力強くチャイムを鳴らす。
「鍵は開いてますから、どうぞ上がってください」
インターホンから平坦な声が述べた。僕は息をのんでゆっくりとノブに手をかけ、そろりと玄関へ入っていく。
夕暮れを過ぎてだいぶ薄暗いのに、家の中はあかりひとつなく薄暗かった。
細い磨りガラスからわずかに入る夕日だけを頼りに、僕はそっと廊下を進み、階段を踏みしめるようにして上がる。
ーー家の人は、いないんだろうか。
すごく静かで、暗くて。荒井くんの気配さえ、感じられないくらいだ。
「昭二」とかかれたルームプレートの前で、立ち止まる。
荒井くんの部屋には、まえにいちどだけ入ったことがある。ご家族がみんないないときで、荒井くんは恥ずかしそうに自分の部屋へ通してくれたんだ。
あのときの胸の高まりを思い出す。今はこんなに悲しいのにね。
「あらいくん、いる?」
そんなに大きい声のつもりはなかったのに、自分の声がやけにうるさく耳に届いた。
「どうぞ」
静かな、いまのこの家の空気とおなじようにひっそりした声が中から聞こえた。
ドアを開ける。
明かりはついていなかった。カーテンは開いていたのでうっすらとした赤い光が最後の黄昏で部屋を照らした。そこにぼつんと、荒井くんが座っている。
部屋の真ん中、床の上に正座して。
インターホン、どこでうけたんだろう。この部屋からあの声は届いたのだろうか。
そのくらい、荒井くんには動いた様子が感じられなかった。
ずっとずっとながいこと、この部屋でひとりぼっちだったみたいに。
僕はまた言葉を失う。ふらふらと部屋を進み、ぺたんとひざをついて荒井くんの顔を見た。
目元に涙の後はなかった。怒りで歪んだ唇もなかった。
ただ黙ったままの、しずかなしずかな表情。ゆっくり僕を見る。
その視線が悲しくて、いたくて、寂しくて僕は荒井くんに抱きついた。
「荒井くん、ほんとにごめん! 今日楽しみにしてくれてたのに! もう僕のこと嫌いになっちゃったよね!? ね?!」
いっそう強く腕に力を込める。返事が怖い。泣きそうなのは僕の方だ。
「腹は立ちますが、この程度で嫌いにはなりませんね」
思いがけず冷静な声音で、荒井くんははっきりとそう言った。
驚いて腕を伸ばし、荒井くんの顔を見る。
「・・・それ、ほんと?」
ええ、まあ、と荒井くんがいう。
「あなたという人と付き合っていくわけですから、非常識な点には慣れっこです」
特に遅刻なんて今更ですしね、と荒井くんは付け足した。
なにそれひどい。・・・でも今はありがたい。ああ、荒井くんって素で口が悪いんだー。全然悪意は感じないのに言うことがきつい。いつもの荒井くんと話してるかんじにだいぶ近い。嬉しかった。
駅でのまちぼうけの様子をたずねると、
「正直、待っていられたのは最初の30分だけでしたし、それに」
そこで言葉を切って、荒井くんがまっすぐ僕を見た。
「え、なに、なにかあったの」
なんとなく僕は動揺してしまう。
「ええ、まあ、たいしたことではないですが。聞きたいですか?」
僕が黙って頷くと、荒井くんは目線を外し、息を吐いていった。
「ナンパされました」
「えっ」
・・・・・・ えっ? ナンパって、あのナンパ?
へい彼女ーぉ、とかのあれ? ・・・っていうか、相手女の子? 男? え???
なんであらいくんが?
僕が固まっていると、それをじーっと見ていた荒井くんが急に吹き出した。
「それで、ど どどどうした の ・・・?」
え、なんでいま笑ったの? 笑うところだった? この先聞いて良いのかな? なんかこわい。
「近くの喫茶店で、お話しましたよ。喉も渇いていましたし」
「きっさてん?! 一緒に!?」
「ええ」
「・・・相手、男?」
「よくわかりましたね」
こわごわ聞いたのに、荒井くんたらさらりとかわす。もうね、がーん、てかんじだったよ。荒井くんがほかの男と・・・。ああ、なんとなく女の子相手だったらまだよかったのに! 男って、えええ男って! 僕の荒井くんに!
「楽しかったし、また機会があればご一緒したいですね。優しいところもあって」
荒井くんは涼しい顔でそう続ける。
ええーなにそれひどい・・・。 あらいくん、男なら誰でもいいっていうのかあ!
もしくはそんなにそいつが好みだったのかああ! 僕というカッコマンをさしおいて!! まあ今日は約束やぶったからあんまり大きいこといえないけど!!
「で、あらいくん、その・・・ そいつのこと好きになっちゃった?」
僕のことより。
待ちぼうけさせて連絡もせずにいた僕なんかより、ずっと。
甘えた希望だけど、否定して欲しかった。あなただけです、って言われたかった。
そんな資格ないのわかってるけど。嫌われても文句いえないけど。でも。
「そうですね、まだわかりませんけど」
・・・。
ですよね ー。 ・・・。 あ、ちょっと僕、ダメかもしんない。
急にくらりときて、両手を床についてうなだれてしまう。
荒井くんはまた僕を見て、今度はいじわるに笑った。
「優しいですもんね、新堂さんは」
がばっ、と体をはね起こす。荒井くんは笑っていた。
「しんどぉお?!」
「そうですよ、新堂さんです。ナンパされたっていうのは嘘ですけど」
駅でぼーっと突っ立っていたら通りがかりの新堂に話しかけられた。暑かったのでお店で飲み物を飲んだ。どこいくんだとか、成績が下がってやばい、とかいう話を10分ほどしてから別れた。以上が本当のところらしい。僕はもう脱力してしまって、床に転がってその話を聞いていた。
「40分連絡なしということで、寝過ごしたものと見なし帰ってきました。
どうです、このくらいの仕返しならしてもいいですよね?」
荒井くんが笑って、僕の髪を優しく梳いた。ひんやりした指の感覚がきもちいい。
「かんべんしてよ・・・ 寿命だいぶちぢんじゃった」
ふふ、と笑った荒井くんが、僕の耳元にキスをする。そして小声で、
「僕が好きなのはあなた一人です、知ってるでしょ?」
そういうところが愛おしくてかわいくて、僕は寝そべったまま腕を伸ばして抱き寄せた。
部屋が真っ暗になる頃、僕はふとたずねる。
「そういえばさ、今日ほんとはどこいくつもりだったの? ずいぶん嬉しそうにしてたけど」
「本当はサプライズの予定だったんですけど、まあいいでしょう。
サーカスのチケットをもらったんです。以前あなたがみたいと言っていた」
「あーあれ」
ふたりでご飯食べてるとき、テレビでちらっとやっていたサーカス。
へー、おもしろそうだなぁ、と言ったような言わないような。
荒井くんは子供の頃見たことがあるって言ってたっけ。僕はいいなーって返して。それだけのやりとりだった気がするけど、僕が言ったの覚えててくれたんだ。
僕はなんとも嬉しくなって、背中からもういちど愛しい君を抱きしめる。
「期限は今月いっぱいですから、来週は行きましょう。
次にすっぽかしたりしたら知りませんよ?」
チケットを口元に寄せながら、荒井くんがいたずらっぽく言った。
「うん、またナンパなんかされたら僕が困るものね」
僕も笑った。
ほかのやつになんて渡すものか。荒井くんは、ぼくのものだ。
そして同じように、僕は荒井くんだけのものだ。
そんな幸せな独占欲に、僕はしばられていたい、と思った。
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