題名は未だ無し (創作小説)

□第二章
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そう言いながら俺はぜぇぜぇと肩を上下させた。
そして窓ガラスを蹴破る。

二、
「ちょちょちょちょっと!!何やってんですか!?」ミカンが予想外の出来事に慌てふためく。
「ばーか、こっちのほうが断然かっこいいじゃん」
そう、何度も言うがかっこよさってのは大切だ。
俺とミカンは窓枠を乗り越えて院内に侵入した。
「ほら、ジビキさんのせいで警報が鳴ってるじゃないですか」
「ミカン、お前は何にもわかっちゃいないな。こっからハラハラドキドキの脱出劇が始まったほうが楽しいぞ」
「そんなのに付き合わせられる僕の気にもなってくださいよ。ほら、足音が聞こえる!」
「どっちだ?」
まったくこいつの耳の鋭さには呆れてしまう。
まぁだからこそ『ミカン』たりえるんだが。
「右手廊下向こうの曲がり角から二十メートル向こうです。人数二人。あ、もうあと十五メートル」
少し拗ねたせいか語尾が少し荒々しい。
「充分時間はある。想定済みだ。着いてこい」
そう言って腰からグロッグを抜き、一気に廊下を駆け出す。
あ、グロッグってのは拳銃の名前ね。
「そっちは人が来ますってば!」
俺を止めようと追いすがるミカンにわかってると合図を送ると、黙って着いてくる。
曲がり角まであと五メートル、四メートル、三メートル、二メートル、俺にも足音が聞こえてきた。
残り一メートルで下半身からスライディング。
目の前に警備員、その二メートル向こうに男性看護師を確認。
足元から見上げる形になった警備員の顎に狙いを定めて頭を吹き飛ばし、崩れ落ちようとする股の間から看護師の心臓を撃ち抜いた。
スライディングの勢いを殺して立ち上がる。
「うわぁ、俺今すっげぇかっこよかったんじゃね?」
ドタドタと後から着いてきたミカンが、脳味噌をぶちまけた死体を見て溜め息をつく。
「ジビキさん、これはどう考えてもやりすぎでしょ。あなたは人を殺すことに何も感じないんですか?」
顔を真っ赤にしたミカンが俺に詰め寄ってくる。
「悪いけど俺はなんも感じねぇよ。理由を百通りばかし仏さんの前で滔々とくっちゃべってやるか?それに俺達は人の皮を被った獣を仲間に率いれようとしてんだぜ?今さら何言ってやがるんでごぜぇますか?だよ」
絶対に舌戦じゃ俺に勝てないと知っているミカンは顔を一層真っ赤にして警備員達の来た方向に向かって歩き出した。
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