題名は未だ無し (創作小説)

□第二章
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一、
「索敵に入れ」
俺は隣にうつ伏せになって目を凝らす少年に言う。
「了解」
少年が応える。
「目標発見。二階部分の左から三番目の窓です。
敵影発見。前方十時方向より対象に接近、看護師と思われます。目的は対象の栄養補給かと。いかがされますか?」
あどけなさの残る黒髪童顔低身長な少年が前方を凝視しながら言う。
まったくこいつはいつ見てもなぜ小学生にしか見えないのだろう。
「ジビキさん?聞こえてますかぁ?」
「悪いミカン、りょーかい。対象に近づき次第、射殺する」
俺が応える。
そう、俺はジビキでこいつはミカン。
自己紹介終了ってことで。
何してるってか?
まぁおいおいわかるよ。

俺はM-16アサルトライフルにダムダム弾を装填する。
この銃は本来スナイプ用ではない。
だけれど、ゴルゴ13はいつもこれを使っている。
まずは形から入りたい俺としては、やはり彼を真似るべきであろう。
そしてダムダム弾ってのは弾の先っぽが対象に命中するとマッシュルーム型に拡がり、より致死力を高める。
まぁ頭に当てれば軽くなくなっちゃうよね。
「やっぱり殺さなきゃいけないの?僕は他にも方法があると思うんですけど」
少年が俺を疑うように覗きこむ。
「ばーか。方法なんて糞程あるにきまってんだろ。だけどな、これが一番派手でかっこよくて効率的なんだよ!んな事より目標は?」
そうなんだ、かっこよくなくちゃ。
「目標異常なし。まぁ拘束具のせいですけど」
「風向は?」
「北北東から南南西へ、追い風で風力3」
「距離は?」
「千」
「りょーかい」
そう言って、キリキリとライフルの計器をいじってスコープを覗く。
「敵影視認、スナイプする」
スコープの中のドットサイトに看護師を認める。
十字の真ん中に看護師の頭を確認した。
トリガーを静かに、ゆっくりと引く。
ミカンが耳を塞ぐ。
消音器に吸収しきれなかった音が辺りに響く。
「ヒット?」
「ヒット。ぐちゃぐちゃです」
「よし、行くぞ。次の警備巡回まであと十分。それまでに拘束を解く」
「了解、走りましょう」
ライフルをそこに捨てて俺とミカンは走り始めた。
五分程で目標の部屋の下の窓まで辿り着く。
「残り時間は四分二十五秒です。相変わらず体力無いですねぇ」
ミカンが腕時計をチラリと見て言う。
「う、うるせぇ・・・余裕よ・・・窓を破って侵入」
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