清雅×秀麗
何故あいつを庇ったかなんて、自分でもわからない。
とっさの行動―――反射に近い―――をとって、その直後に鈍い痛みが身体を襲った。
霞んだ視界には赤黒い何かが散らばって、それが己のものだと頭では理解していても現実感がない。
泣き叫ぶような、あいつの声。
甲高い、耳障りな「俺の嫌いな女の声」だ。
ただ、それでもあの一瞬だけは、すべてが自分のものになったようで嫌悪感がわいてこなかった。
泣き叫んで煩い声も、十人並みな顔に流れる雫も、肩に触れて抱き起こす熱も、すべてが自分のものになった。
そんな気がした。
「―――なんだよ」
まるでそれは
"片恋"みたいだ。
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