愛してる

愛しい竜のしつけ方
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朝の陽光が窓から差し込んでいる。

その眩しさにつられて、幻獣王ウランボルグは目を覚ました。

白い清潔感のあるシーツに、人の重みで皺が寄っている。

その皺を愛しく想うように、彼はそっとそれを撫でた。

白いシーツに包まれて、余計に神々しい恋人の寝姿に見とれながら。

アーカンジェルに触れたら起きてしまう。

だから今は我慢して、起きるまで見つめていよう。

そう決心したのはいいが、なんとなく落ち着かない。

触れたい。

そう思ってしまう。

「・・・・小さな声で、名を呼ぶくらいなら」

とくん。

彼の名を呼ぶだけでこんなにも胸が高鳴る。

「・・・・アーカンジェル」

とくん。

彼の誓約者はとても美しくて。

「アーカンジェル」

とくん。

とても誇り高くて。

「アーカンジェル・・・・」

そしてとても自分を愛してくれる。

ウランボルグは愛しくて何度も小声で彼に呼びかけた。

「アーカンジェル、俺は」

―――アーカンジェルを愛している、そう言おうとした時だった。

「・・・・待った。その先は私から言わせてくれ、ウル」

彼の愛しい者の声によって遮られた。

「・・・・いつから起きていたんだ?」

「君が私の名前を呼び始めたあたりかな」

ウランボルグの方へ身体を傾けると、さらりと彼の銀髪がゆれる。

その様子に見とれつつも、少々ウランボルグは拗ねたように言った。

「それはかなり最初のほうだ。・・・・起きているならそう言ってくれればいいのに・・・・」

・・・・そうすれば触れるのも我慢しないですんだのに。

ぼそぼそと最後のほうは聞き取りにくい声で言ったが、アーカンジェルはしっかりと聞き、くすりと笑った。

「あまりにも君が一生懸命私の名前を囁いてくれるから、機会を逃してしまったんだよ。でも、最後の言葉だけは、朝一番、私から君に言いたい」

だから、とアーカンジェルは言いながらウランボルグの頬を撫で、額に口づけを落とした。

「おはよう、ウランボルグ」

額から瞼にまた口づける。

「今日も君を愛しているよ」

そして最後は唇にたどり着いた。

「明日も君を愛している」

唇を離し、ふわりと美しい笑みを浮かべたアーカンジェルに、ウランボルグはぼそりと呟いた。

「・・・・ずるい」

「ウルだってずるいよ」

心なしか頬の紅い自分の竜を見て、アーカンジェルは笑いながら言った。

「名前をそんなに呼ばれたら、私だってもたない。もう仕事の時間なのに」

ゆっくりと自分たちを起こしに来る足音が聞こえる。

朝の時間の終わりを告げていた。

「アーカンジェルは仕事中はあまりかまってくれない」

拗ねてしまったウランボルグに、アーカンジェルは苦笑した。

「仕方ないだろう。・・・・でも、今はこれで我慢してくれ」

アーカンジェルは、ウランボルグの顎をとらえ、再び彼に口づけた。

先ほどより深く。

『愛してる、ウランボルグ』

『俺もアーカンジェルを愛してる』

想いが唇を通して伝わってくる。

あたたかい。

名残惜しそうにアーカンジェルは唇を離した。

「ウル」

彼の髪を梳きながら囁く。

「夜まで、待っていてくれるかな」

その言葉に、ウランボルグはまた恋人に振り回されているような気がしてならなかった。

夜まで、心臓が持つだろうか。




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