紅玉
□もしも秀麗と絳攸が結婚したら
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(あれ、そういえば玖狼は絳攸殿と秀麗を結婚させて家督を継がせるって言ってたっけ。もしかして現段階では一番可能性があるのかな?絳攸殿と秀麗…かぁ)
紅家長兄の手は急須へと伸びていたが、その中には冷めきった白湯…もとい水しか入っていなかった。
もちろん彼はそれに気付いてなどいない。
もしも秀麗と絳攸が結婚したら。
「おはようございます、絳攸様」
朝の陽光が差し込む寝室に、愛しい妻の声が響いた。
「ああ、おはよう」
少々照れながら、愛しい妻こと紅秀麗が手にしていた上着を受け取る。
「今日はいつもより寒いですから、あったかくして出仕しましょう」
そう言いながら出仕の準備を手伝う秀麗にふと目を留めた。
艶やかな黒髪は、王から下賜された美しい花簪で結い上げられている。
衣は家柄を象徴する鮮やかな紅。
所々に金の刺繍が見え、少女から女性へと成長した秀麗を美しく見せる。
紅家直系長姫の名にふさわしい姿は、絳攸を動揺させた。
―――今日は、いつもより綺麗だ。
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