紅玉

迷い人は姫と出逢う
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(―――ここはどこだ?)

見渡してみれば部屋もなく、庭が見える廊下が続くばかりである。

李絳攸はお約束のごとく道に迷っていた。

国試を16歳で状元及第し、出世街道を突っ走ってきた才人と誉れ高き男。

しかし彼は、絶望的方向音痴だった。

優れた才を与えられていても、方向感覚だけは一欠けらも与えられなかった哀れな男である。

「だいたいこの地図がおかしいんだ!なんだって吏部がこんなに小さく記してある!?もっとわかりやすい大きさで明記しろ!!」

最も彼は自分が方向音痴だということを絶対に認めない。

「しかも誰も通らない!まったく、誰か一人は歩いてもいいだろうがっ!!」

道に迷うこと一刻半、人も通らないところにきてしまった彼は、“何気なく人に行く場所を尋ね、目的地へ連れて行ってもらう同行する”という戦法も使えず、途方にくれていた。

ふと庭を見渡し、次いで空を見上げると雲行きが怪しくなっている。

「…これは一雨くるな。くそっ!ここじゃ雨にぬれてしまうじゃないか!」

そうこうしているうちに、ぽつぽつという雨の音。

それはやがてざぁざぁと音を立て始めた。

空のうなり声まで聞こえ始める。
「おまけに雷か…」




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