小説

□その後、
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「さて、と。……ここまできたら誰もいないよね?」
にっこりと満面の笑みをする匪口さん。
う、かっこいい、けど……違うよ!!駄目だめ、無理。

「な、何する気ですかぁッ」
「だからさぁ、分かってるくせに。……わざと?」
ずい、と匪口さんの顔が近づいてくる。
うわあぁヤバイ、そんなキレーな顔近づけないで!心臓バクバクし過ぎておかしくなりますから!
「ヤらして?」
「っ、なッ……!」
かあぁ、と顔に熱が集中する。にや、と匪口さんが面白そうに笑った。
「む、無理っっ」
「何でー?」
む、と口をとがらせる。なにそれ可愛い。……じゃない!今この状況はマズイよ!!
手を匪口さんが迫ってくるのを阻止しようと、前に出したら、……そんなのは気にもせずに、腕を掴まれた。逆にこっちが身動きとれなくなって、このままだと……!
「やめ、てくださいっ……!!」
ぐ、と精一杯顔を背ける。
匪口さんの動きが、私の顔と、あと少し、の距離でぴたり、と止まった。
「……」
「?」
目だけ動かして匪口さんを見たら、びっくりするくらい、真面目な顔をしていた。
「桂木」
匪口さんが私の名前を呼ぶのを聞いただけで、顔にまた、熱が戻ってくるのが分かる。マトモに顔を見られない。
「ねえ、俺とするのそんなに嫌?」
匪口さんが、私の逸らした顔をのぞきこむように、そんな事を聞いてくるから、その顔が。その言葉が。愛しくて、しょうがなくなった。

言葉につまって、口を開いては、閉じて、を繰り返す私に、匪口さんは、
「俺は好き、大好き、だからヤりたい。……桂木は?」
なんて、今までが嘘だっだみたいに、真剣に。
「だ、……って。恥ずかし、くて、死んじゃう……私」
あわあわ言いながら、やっと拒否の理由を話したら、匪口さんが、そのままぎゅ、っと私を抱きしめた。
「えっ、?!」
「やっべー可愛い。尋常じゃない、桂木可愛い。マジかよ、もー無理、俺やばいって」
ぎゅーっと痛いくらい私を抱きしめる、あぁ、匪口さんの顔も真っ赤だった。
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