小説

□サア、オレガマモッテアゲマショウ
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「いたっ」
「ってえな、テメェ」
ぶつかった相手を見る。
ぎろ、とオレ達を睨みつけてきたのはいかにもガラの悪いヤツ。
「は?お前がぶつかってきたんだろ?ゴンは普通に歩いてただろ」
オレがゴンを庇うように前に出て抗議すれば、そいつは不快感を隠す事もなくあらわにした。
こいつは、決して弱くない。でも……オレたちには全然及ばない。そして、それに気づいちゃいない。それも分からないくらい、力が離れてるんだ。
多分、オレたちは只のどこにでもいる子供にうつっているだろう。

「こいつ、やっていい?」
つまりボコボコにして追い払ってしまっていいか、とゴンにそう言ったら、がっ、と腕をつかまれた。
「なん、「駄目」
「! い……」
いいじゃん、と言おうとした時、バキッ、と音がした。殴られたのは。
「ゴン!!……てめぇ、」
ギロリ、と物凄い目で睨み返した。さすがに、相手も怯んだようだ。
「ダメ、キルア!!……すいません、これから気をつけます」
何で、こんなやつにゴンが謝んだよ。


その場から離れた後、ゴンに問う。
「なんであんなやつっ!ゴンがわざわざ殴られる事ねーだろ」
「あんなトコで喧嘩しちゃ、迷惑かかるから。オレが殴られとけば、すむでしょ」
にかっ、と綺麗に笑うゴン。
優しいゴン。
誰よりも、優しいから。
「そう、……か」
だから、傷つく。
「だから、喧嘩したら駄目だよ」
「ごめん、ゴン。……痛くなかった?オレが余計な事……本当ごめん」
「大丈夫だって。あんなの全然痛くないしね。オレのために怒ってくれたんだよね、ありがとう」
この笑う顔を、守ってあげたいと、思うんだ。

この笑顔は、誰にも汚されちゃ、イケナイ。
だから、そういうヤツは、消サナクチャ。

あんな弱い奴が、ゴンを傷つけられるハズが無いし。ゴンが、気にしていない事も、知っている。
けれど。どんなに小さな虫ケラだって、ゴンの笑顔を、少しでも曇らせる可能性があるなら。排除、しなきゃ。
「ごめん、ゴン」
す、とその殴られた頬を優しく触る。
「キルア?」
「大丈夫。……誰にも、もう殴らせないよ」
迷惑かからないとこなら、良いんだよね。呟いた声は、ゴンに聞こえないように。
オレは、微笑んだ。
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