左カズ

□★×××(キスキスキス)
1ページ/1ページ

「…んっ………ふっ……ん。」

鼻を抜ける甘い声に誘われて、唇の間、するりと舌を割り込ませる。

「んん!!…な、なにすんだ!」

割り込ませた途端、右ストレートが綺麗に僕の頬に決まる。

「酷いな。葛馬。」

殴られた頬をさすりながら、殊更悲しげに訴える。

「てめぇこそ、妙なもん入れるんじゃねぇ!」
「妙なって。ただ、舌を入れ……。」
「わーわー、言うな!」

先程の舌の感触を思い出したのか、真っ赤になって葛馬が大声を張り上げた。
その照れている様子が可愛らしい。

「くくっ。」
「何が可笑しいんだよ。」

唇を尖らせて、まだ赤い頬のままで葛馬が尋ねた。

「いや。やっぱり、まだお子様なんだと思ってね。ディープキスくらいで慌てるなんて、可愛いよ。」
「なっ…。あれはイキナリでビックリしたからで。」
「じゃあ、イキナリじゃなかったら、してもいいのかい?」
「それは、その…。」

口ごもる葛馬に追い撃ちをかけるように呟く。

「お子様は無理しなくていいよ。」
「やってやるよ!」


――かかった。


葛馬に、わからぬようにそっとほくそ笑む。
負けず嫌いな葛馬の事、こう言えば『やる』と言い出すのは計算の内だ。

「キス、するよ?」

頬に手を添えたら、ピクっと震えた。


初めて葛馬と唇を重ねた日の事を思い出す。
僕が『初めて』だと言っていたね。
緊張に、その唇は強張っていた。


近頃、ようやくキスさせてはくれるものの、未だにキスする度に頬を赤く染め上げる。
その初々しさが、堪らなく愛おしいのだ。


ゆっくりとキスを落とす。
触れるだけの優しいもの。小鳥が会話しているように唇を何度も啄む。

「んっ……ぅ、ンっ。」

唇で唇を包み込み、固く閉ざしている入口を舌でノックした。
決心がついていないのか、極僅かに開いただけだ。
だが、その隙間に舌をねじ込み、葛馬の口腔への侵入を果たす。

「んっ、んん…。」

ぬめった舌が入り込んだ衝撃に、葛馬の全身が強張っていく。
縋るように、僕の腕を掴む手にも知らずに力が入っているようだ。
縮こまって怯えている葛馬の舌に、優しく己の舌を往復させながら、大丈夫だと伝えてやる。

「…ふっ、ン………っ……ん、んっ……。」

緊張の解けてきた舌に、今度は舌を絡め付かせた。
絡めては解き、解いては絡めていく。翻弄するような動きに、辿々しいながらも、葛馬の舌も次第に応えるようになってきた。
そのぎこちない動きは、まるで母親の後に付いて、初めて外に散歩に出たヒヨコのようで、懸命に僕の舌に追いすがってくる。

「ぁ、ふ……ン、っ………んっ。」

どちらのものかもわからぬ唾液が顎を伝い、水音が鼓膜を揺する。
葛馬の頬は一層、朱を強め、固く閉じていただけの瞳は、何処かうっとりとした雰囲気に変わってきていた。
金の髪に指を絡め、腰を掻き抱きながら、角度を変え、何度も何度も口付けを貪る。



どれくらいの時間が経っただろうか、永遠に続く様な気がした口付けが、ようやく終わりを告げた。

「はっ……ぁ、んっ……。」

ゆったりと葛馬の瞼が持ち上がる。
けれど、トロリとした表情は、夢見がちだった。
床に座っている状態だとはいえ、僕が腰を支えていなければ、後ろに倒れていただろう。

「どうだい?『大人のキス』の味は?」
「ん……、何か、気持ちイイ…かも。」
「それじゃ、もっと気持ちよくさせてあげようか?」

葛馬を押し倒しながら、そっとパーカーの隙間から手を忍ばせる。
だが、そこで葛馬はハタっと夢から目覚めてしまった。

「調子に乗んじゃねぇー!」

本日二度目の鉄拳が僕の頬に炸裂した。

「そんなに照れなくてもいいじゃないか。」
「ばっ…照れてねぇ!」
「そうだね。こんな事で照れていたら、この先持たないからね。」
「こ、この先って?」
「知りたいかい?」

眼鏡を押し上げながら、口端を吊り上げると、葛馬は首が千切れるのではというくらい、首を横に振った。



何も知らない葛馬。
すべてが初めての葛馬。



時間はたっぷりあるからね。
ゆっくりと、教えていってあげるよ。





【あとがき】
左さん、何だか変態っぽい;まっ、変態だからいっか(笑)←酷い;
何も知らない純情葛馬に色々教え込む変態左が好きv

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ