灰男
□この手
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ここは暗い闇の中。
ここには少しの光しか無かった。
「おーい、いつまでそうしてるつもりだ」
隅に蹲っているのは…僕だ。
顔を覗かれたけれど僕は焦点を変えずに
そのままじっとしていた。
「お前はもう家族の一員なんだぞ」
だから気にもする、と微笑む彼の名はティキという。
…名前なんて覚えても仕方ないけど。
だから…どうだっていい…彼の名なんて。
ただ、じっと底を見つめるばかりいた。
何を見ているのか自分でもよく分からなかった。
ただぼんやり。
ふと、髪の隙間から甘い匂いが漂う。
ひどく鼻がツンとする。
ここに来て何日経つだろう。
そういえば食べ物もあれから全く食べていないな。
「ポチー、タマゴ食えよー」
女の声。
「こらっ、少年はポチじゃない!」
「だったら、コロー?」
「……呼び方の問題じゃない、少年はペットじゃないんだ」
「ちぇつまんね」
何だっていい。
「千年公も甘いよなー、もっとこいつに殺させちゃえばよかったのに」
「少年にとっては…3人でも十分なのだよ」