灰男

□久遠
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コムイに呼ばれたラビ。

それをただただ待つ僕。


それに何だか止まらないざわめきが僕の胸を絞めつける。


それはラビにも感じていたのだろうか、
重い足取りでコムイ室長の元へ行った。



そんなラビを待って

じっとしていた僕の傍に長い黒髪がひらりと舞った。

神田…?




ラビの事に夢中で神田の姿に気づかなかった。



「…心配か?あいつが」


いつもの様に気に食わない形相で
僕に言葉を向けてくる。




心配…なんて

ただいつもの様にAKUMAを破壊して
いつもの様にすぐ帰ってくる、それだけだよ。






でも止まらない胸騒ぎが僕を不安にさせる。





「そんな顔で教団にいられたら迷惑なんだよ」


そう言い放つと早足にその場から立ち去った神田。

肩から何かが抜け落ちた。
黒くて長い綺麗な髪の毛が一本。







とても嫌な予感がした。







その直後、扉が開く音がした。

僕はギクっとした。




中から鮮やかな朱色の髪が現れた。


肩から垂れ下がったマフラーを掛け直すと

僕に視線を向けた。





「ん…、アレン、待っててくれたのか」

「…はい」





気持ちが徐々に沈んでいく…。

コムイさんに呼ばれたのだから任務だろう。





「ちょっくら行ってくるわ…」



答えは分かりきってるけど…



「何処へ?」
なんて聞いてしまった。





「AKUMAからイノセンスを奪い返す任務に加わりに。」

「そう…ですか、すぐに帰って来れますよね?」




そう、僕はラビが


ああ、すぐに帰ってくる
って言ってくれると思ってた。




そんな期待を持たなければ僕は潰れてしまいそうで。




「すぐには…帰れない…そのうちかな」
「……」



そのうち?
やめて、そんな言葉聞きたくない!




「…そんな顔するな?アレン。笑って送り出してくれさ」


「いえ、僕も行きます…!」





コムイさん、なぜラビだけなの?

なぜ僕は呼んでくれなかったんですか。

ラビじゃなきゃ駄目なんですか?





「…それは駄目!アレンはここで待ってな」

「なんでですか」



「アレンまで危険に晒させたくないから」





「僕だっていつだって死ぬ覚悟はできてます!
 だから教団にいるんでしょう」



「…俺の気持ちも分かってくれよ…」


ラビはそう言うと目的地へとすぐに旅立ってしまった。



ラビだって僕の気持ちも分かってくださいよ!


待っているだけがどれほど辛いか。



死ぬなんて口に出して想いたくないけど、


貴方がもし死んだら僕はどうしたら。


一人でラビは死んでいって

僕は一人で悲しんで…




そんなのは絶対嫌だ。
無理やりでも付いていくべきだったでしょうか。








もう僕は誰も失いたくありません…。
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