灰男
□つまみ食い
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いつもは時間のずれもあって
僕が食べている時に彼が隣にいることは無い。
食べる事以外に口を動かす事はそう、無いだろう。
この目に映ってるのは目の前の食べ物だけ。
頭を働かせる事も無い。
が、しかし、
たまーにひょっこり、
こうして隣に現れ、
一緒にご飯を食べている。
それだけ。
それだけのこと。
ちっぽけな事。
こんなことでさえ
いつもと違うだけで
こんなにもドキドキする。
今日はいつもよりよく笑う。
口をよく動かす。喋る。言葉を探すのに頭を使う。
僕の目には彼が映ってる。
なんでか
いつものメニューの筈なのに
味が違う。
美味しい。
僕は彼の名前を呼ぶ。
「ラビ」
それに答えるように彼は笑った。