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□ボコ愛 01:たたく
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ばきばきばきごきごきんあああ痛い痛い痛い痛いごりごりばきん!あぁぁあぁぁああぁ!!!!!!

もう何回死んだのかなんて分からない。
ただただこの憎しみが段々と深く重くなってゆくのだけは確かに実感した。

痛い痛い痛い痛い殺してやる。絶対に殺してやる。殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる。
憎い、憎い、憎い、憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!!!!

深まる憎悪。遠退きかける意識。
すると先程まで嫌なほど聞こえていた骨を砕く音が途絶え、代わりに乾いた音がこの空間に響き渡る。…平たく言うとそれは、平手打ちだった。
そしてそれによって一度は遠退きかけた意識が無理矢理覚醒させられてしまった。

ぼやける視界の中、返り血に染まった美しい男がいやらしく口唇を歪め、微笑んでいる。


「こらこらリィゾ。まだ眠るのは早いぞ?」

そう言ってこちらの右腕を優しく掴んだかと思えばばき、と再度骨を砕く鈍い音が響く。直後、身体に走る激痛。


「…あ、ああああぁ!!!」
「ははははは!!愉しいなぁリィゾ!これほど愉しい余興はそう中々ないぞ?」

そうやって何度も同じことを繰り返す。
やがて意識が遠退き、狂いかけると頬を打ち、無理矢理にでも正気に戻させる。
眠ることも、ましてや狂うことさえも許されぬ意味のない行為。
しかも吸血鬼となり、得物の魔剣の呪いによって刻に疎まれたリィゾの身体は死ぬことを赦されない。そう、"死"という名の解放を望むことさえ、彼には許されていなかったのだ。
骨を砕かれようと、頭部を破壊されようと、臓物を散りばめられようと死ぬことの叶わない身体。

そんなリィゾに残されていたのは、ただひたすら根源たる男を憎悪することだけだった。


「…朱い、月」
「お前はもがき苦しんでいる表情が一番愛らしいよ、リィゾ」
「……く…は、」
「そんな反抗的な眼をされると、もっといじめたくなる…」

ふふ、と艶やかに笑うと慈愛に満ちた瞳で朱い月はリィゾを見つめた。


「さて、第二ラウンドだ」


ああ、先に言っておくが意識を手放そうとしたらまたひっぱたくぞ。まあ、精々気をつけるのだな。
そう言って深く深く、口づけられる。

…絶望の夜はまだ始まったばかりのようだった。



(たたく)




end

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