10/25の日記

16:26
装甲悪鬼 光→景明
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そういえばこうして互いに素顔で相俟見えるのは随分と久方ぶりであったか。
眼前の想い人を熱の篭った目で見ると彼は罰が悪そうに視線を反らした。
…なんと愛いやつだ。興奮を隠し切れずに光は半ば勢いでそうまくし立てる。
するとふざけるな、とでもいうように景明は強くこちらを睨んできた。殺気を含んだ赤い瞳がまるで宝石のように美しい。


「……ふふ、吠えずともよい。お前は力を蓄えてただ待っていろ」


オレは現在、各地を点々とさ迷っているが最後はどうせ、お前のところにかえるのだから。
その言葉に対し景明は悔しそうに唇を噛んだ。
そりゃあそうだ。賢いお前のことだから、自身の力がこの光にかなわぬことくらい、とっくの昔に気付いていようとも。
それでも。圧倒的な力の差を目の当たりにしてもなお、この想い人はオレに立ち向かってくるのだろう。

ああ、その愚かさが、健気さが、愛おしい。
抱きしめてやりたい。労ってやりたい。犯したい。鳴かせたい。泣かせたい。
だってオレは既に、彼の血色の瞳が濡れた時の美しさを知ってしまった。
苦しみに喘ぐあの慟哭を聞いてしまった。

景明。景明。嗚呼、景明!
最高だ、お前は最高だ!笑った顔も、困った顔も、怒った顔も、悲しげな顔も、憎しみに歪んだ顔も、泣き濡れた顔も、絶望に染まった顔ですらも美しいとは。


「愛しているよ」

景明。景明。愛している。愛している。狂ってしまいそうなほどに、愛している。

するとそれらの愛の言葉をずっと聞いていた景明はもう我慢ならないとでもいうように涙をこぼした。
どこで間違えてしまったんだ、俺達は。
そう掠れた声で嘆きながら彼は美しい赤き瞳から美しい透明な涙を流す。

…オレ達は間違えてなどいないさ。ただあまりにも親しい者を愛してしまった、それだけのこと。
しかし幾度そう言えども景明は理解しようとしない。否…理解はしていたとしても倫理が、道徳が、常識が、オレの愛を阻んでしまう。

ならばどうする?……その答は簡単だ。
それらの障害を創った根源たる世界を滅ぼし、この光が王として君臨する。
さすれば我等の愛は認められよう。
さすれば景明は光を愛してくれよう。

青い瞳を持つ少女はそう高らかに宣言する。
そしてそれを聞いた彼は静かにまた、涙を流すのだ。
どうして。どうしてこんなことになってしまった、と。

その涙の理由を少女が理解することはない。
だから彼女の想い人は延々と嘆きながら涙を流し続ける。
そして力ではかなわぬと知っていてもなお、自らのツルギを纏い、彼女に挑みつづけるのだ。


そんなすれ違うばかりの兄妹の話があった。
これはただ、それだけのこと。




end



泣きべすな主人公\^o^/

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