Change!


「へえ、レイヴンって意外と背が低いんだね」

言いながらエドガーは鏡を見ている。
レイヴンになった自分の顔を。
レイヴンはというと滅多に感情を表に出さないのだが、今回ばかりは驚いたように自分の体を見回していた。
つまりエドガーの体を。

どうしてこんな事になったのかは分からないが、朝起きたらもうこの状態だったらしい…。

多分、いや絶対ニコの仕業だ。
このまえ、エドガーに尻尾を踏まれた事を恨んでいたし…。
そうだとしたら命に危険はないと思うが、エドガーのせいで、とばっちりを受けたレイヴンが可哀相だ。
当のエドガーは楽しんでしまっているし…。

(仕返しの意味ないじゃない……)

「多分ニコの仕業だから、1日で戻ると思うわ」

「そうなのかい?」

エドガーがつまらなげに言う。
しかし、すぐに顔をあげると

「じゃあ、今日1日だけ役割を交換しようか」

と楽しげに言う。
反論しようとしたレイヴンを遮り、

「レイヴン、これは命令だよ?」

脅すようにレイヴンに言う。レイヴンは諦めたように、分かりましたとだけ言い部屋を出て行った。

「さて、リディア今日も相変わらず可愛いね」

レイヴンが出で行った瞬間、エドガーからいつものセリフが出る。
だけど、今エドガーはレイヴンの姿をしている訳で。
いつも以上に照れてしまって、エドガーを正面から見る事ができない。

「どうしてこっちを向いてくれないんだい?僕の妖精」

エドガーがいきなり目の前に迫る。
あっという間の事で、抵抗する前にエドガーに抱きしめられてしまう。

「やっと捕まえたよ、僕の女神」

レイヴンの顔で優しく微笑むエドガー。

(レイヴンってこんな風に笑うのね…。)

中身はエドガーだと分かっているのに、不意にドキリとしてしまった。

(だって、レイヴンのこんな顔見た事ないし…!!)

必死に自分に言い訳していると、エドガーがそっと離れた。

「…エドガー…?」

「今日はやめておく事にするよ、君も混乱してるみたいだしね」

良かった…このままエドガーに口説かれてたら、ますます混乱してしまうところだった。
安堵のため息をついていると

「それじゃあ僕はもう行くよ」

言って、部屋から出て行こうとした。
ドアノブに手をかけながら、ふと思い出したようにエドガーがこちらを見た。

「愛してるよ、リディア」

それだけ言ってエドガーは出て行ってしまう。
体から力が抜け、思わずその場にしゃがみ込んでしまう。
凄く、ドキドキした…。
その理由がレイヴンだったからなのか、エドガーだったからなのか分からない。

(ああもう!私は一体どっちの事が好きなの!?)
まだ熱の冷めぬ頭でリディアは一人悶々と考え続けた。

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