鹿

-さよならを告げた、愛しい背中-
2ページ/8ページ


金色した蒼い瞳を持つ少年、
うずまきナルトは仲間の危機の情報を
何処から入手したのか
綱手の居る火影室へと飛び込んできた

「綱手のばーちゃん!!
シカマルが、シカマルが
攫われたってほんとか?」

少し大人びたのは気の所為だろうか、

下忍ながらも
多くの任務、修業を熟してきた
ナルトは逞しくも見える

「お前、カカシとヤマトはどうしたー…
(あいつらにナルトを任せたはずだが…)」

「んなこと今は
どーだっていいんだってば!!
シカマルは何処にー…」

未だ荒い息を整えながらも
補佐であるシズネ、そしてネジ達を無視し
綱手の座る机の前へと
構わず突き進んだナルト

綱手を強く見つめる揺らがないその瞳は
今の意志を端的に表している

「落ち着け。」

そんな騒々しくも
驚異するナルトの態度に対し
ネジは冷静な口調で一言放つ

今のナルト見てどう感じたのか、
恐らく綱手の真意は自分と一緒であろう

ネジは、亢奮しきり
感情が高ぶっているナルトの言葉を遮り
説得と共に宥めようと肩に触れた

「…っ」

我に戻り唇を強く噛み締めるナルトに
相変わらず冷静沈着な態度で
はっきりとした口調で告げる





「俺達が今から
シカマルを奪還しに行く。
ナルト、お前は今やるべきことをやれ。」





「ーなッ、」

ー、ナルトを連れていく訳にはいかない

ネジのその判断に綱手は眼を瞑った

そうだ、
今回の奪還任務に
配属出来る人数は精精三人、
それ以上の戦力を出すのは難しい

ましてや九尾ー…ナルトを狙いに
いつ敵が攻めて来るか解らない状態なのだ

その本元を里外に出すなどの
危険には曝したくない

ネジの言う事は正しく、的確だった

「ー、俺も行く。」

予想通りの言葉がそれぞれの耳に入る

この少年の性格上、
簡単には引き下がらないのは承知の上だが
こちらも安易に承認する訳にはいかない

「お前は性質変化の修業があるだろう。」

カカシやヤマトと共に居る事が
何よりの安全だと考えた綱手の判断だった

ー…全てはナルトを守る為ー…

奇襲の前にナルト自身、
更に強くならなければならないと
担当上忍、はたけカカシ、
暗部のテンゾウに修業を付けたはずだった

「ばあちゃん、行かせてくれ、」

「………」





「…シカマルは
俺の大切な木の葉の仲間だ。
俺が絶対助ける!!!」





「………」

三年前、サスケは里を抜けた

自分達では連れ戻す事が出来なかった

もう二度と

木の葉の仲間を、友達を失いたくない

今のナルトからは
そんな強い意志が伝わってくる

ぴくり、

緊張しきっていた目元の筋肉が解れ
ネジはふ、と笑みを零しそうになる

かつての自分は
木の葉の名門、日向一族に生まれ、
誰よりもその才に愛されながらも
「分家」という宿命の枷に悩み続けていた

しかし三年前の中忍試験で
ナルトの迷いの無い
真っ直ぐな瞳に、言葉に、心打たれ
自身に変化をもたらした事を思い出す

狭い鳥かごの中から
羽ばたこうとももがこうともせず
運命など変えられぬと決め付けていた自分

ナルトの仲間を思う強い気持ち、
何度躓いても立ち上がる根性に
少しずつだが自分自身も
変わり始めたのは確かだったのだ

「…綱手様、
私からもお願いします。」

「…。」

果敢に綱手の前へと申し出たネジは
小隊長として、重責を担う覚悟の様だ

その行動にナルトだけでは無く
キバ、チョウジまでも眼を見開いく

「………よかろう。」

しばらくの間伏せていた瞼を
ゆっくりと開いてから
小さく咳ばらいをした後、

五代目火影である綱手は、
うずまきナルトの願い出を承認した





奈良シカマル奪還任務

小隊長:日向ネジ

犬塚キバ(赤丸)
秋道チョウジ
うずまきナルト

任務内容:

直ちに敵を追跡し
奈良シカマルを奪回せよ



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ