鹿
□-幸福論-
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(シカマルSide)
アスマが亡くなってから
12年の年月が経ち
俺は、この12年間で
多くの忍の死を見てきた
今は
中忍から上忍に上がり
今では3人の生徒を持つ担当上忍
適当に忍者やって
適当に稼いで
適当主義な
めんどくさがりやだった俺が
上忍まで上り詰めたのは
ある理由があったから
「シカマル!!」
こいつの師になること
あの人みて−に
かっけ−大人になりたい
16歳の自分は
アスマの墓の前で
紅先生に誓った
そいつは太陽みたいなきらきらした
瞳を真っ直ぐ向けて
かつて俺が「アスマ先生」を
「アスマ」と生意気に呼んでいたように
こいつも俺の事を呼び捨てで呼ぶ
「あ?」
そんなこいつを見ると
自分が下忍だった時代を思い出す
今思えば一緒にくだらねー任務をやって
俺がヘマしたときも
優しくだけど厳しく励まして
助けてくれたアスマ
その声はどこと無く似ていて
俺はゆっくりと振り向いた
任務も終わり解散命令を
出したのにも関わらず
俺の後ろを着いてきた少年
「将棋一局付き合え。」
「………」
すっげえ生意気
俺の師アスマ先生と
同期の担当上忍紅先生との子供
「へいへい。」
俺はふあっと大きな欠伸をして
ポッケに手を入れたまま歩き出した
幸福論-受け継がれるもの-
「ただいま。」
「お邪魔します。」
俺が玄関を開けて中に入ると
迷いもなく靴を脱ぎ捨て
図々しくも俺より先に中に上がった
物音一つしない家
この様子から「あいつ」はまだ
帰ってきてないのだろう
「今日は負けないからな。」
どかっと座り込み
隅から将棋盤を取り出して
準備を始めながら言う
「ば−か。まだまだだっつ−の。」
俺はふっと笑った後
再び大きな欠伸した
パチン
最近こいつは
しょっちゅううちに来て
将棋を挑んでくる
父親がいないからなのか
寂しいのだろうか
構ってほしいのだろうか
そんな事を考えると
例え疲れていても
自然に心を許してしまう
「なあシカマル。」
「あ?」
俺は目も向けず駒を握った後
ゆっくりと将棋盤に指した
「俺の父ちゃんって
シカマルの先生だったって本当?」
いきなりのアスマの話題に
俺は驚いて手が止まる
紅先生から聞いたのだろうか
「どんな人だった?」
どんな人って…
おおざっぱで楽天家の煙草好き…
それしか
頭に浮かんでこね−よ
「一言じゃ言い表せねえな…」
「…」
「…でも」
パチン
「俺にとっちゃ
無茶苦茶かっこいい人だった。」
そう言って笑えばそいつは
自分の打つ番が回って来たのにも関わらず
嬉しそうに食いついてくる
「強かった?」
「ああ。将棋はすげ−弱かったけど。」
「へ−。じゃあさ!!
今闘ったらシカマルとどっちが強い?」
「今やりやえば俺のが強いかもな。」
なんて笑って言ってみる
助けられたよ
あの人には色々と
俺がそう言えば
そいつは駒を持つ手を止めた
.