鹿

-さよならを告げた、愛しい背中-
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「シカマルが攫われた。」





「「………え?」」

酷く冷静な声に耳を疑う

それは正午を過ぎた昼下がり

緊急任務だと告げられ
火影室に呼ばれた三人は息を呑んだ

一人は上忍、日向ネジ

日向一族特有の血継限界の白眼を
受け継いでおり
「日向家始まって以来の天才」と
呼ばれる程の実力者

そして奪還者、
奈良シカマルの同期でも在り
親しい友と言える犬塚キバ

リーダー気質な面があるものの
気性が激しく理論よりも本能で行く行動派で
鋭い臭覚と野性の勘の持ち主である

その二人よりも大柄な巨体、
秋道チョウジは
普段はおっとりした性格だが
親友でもあるシカマルが攫われた事に対し
頓狂な態度を取る事も無く
ただただそこに佇んで居た

「…え、と、…五代目、」

混乱してるのか
発する言葉が見当たらず口をつぐむものの
それでも、固まる二人より先に
詳細を確認しようと一歩前に出たキバ

こほん、

綱手は小さく咳ばらいをし
伏せてた眼を開けば力強い眼差しが
三人に向けられた

「先程の事だ、スリーマンセルで構成した
シカマルの小隊が隣の国、湯隠れの里への
伝達の巻物を届けに森に入った。」

「「………」」

ごくり、息を飲むキバとチョウジに対し
ネジは顔色一つ変えずに
綱手の話に耳を傾ける

「…極めて安全なルートだ、
私もシカマルもそれを把握して
他国の忍びの罠、奇襲が無いことは
以前から確認していた。
…第一襲われる理由が無いのだ。
巻物は極秘な物でも無ければ
狙われる様な高貴な物でもない。」

「………じゃあ、なんで」

「わからん。」

顔を歪ませて
額に汗を浮かべるチョウジに短く答える

その綱手の組む指からは
平然な表情を装うものの焦りを感じられた

「任務は無事完了したと思われた帰路中、
小隊は何者かに襲われたらしい。
帰還した二人は深い傷を負ったが
命に別状は無い。
巻物も無事届けられ"任務"は成功した。
だが、…シカマルだけが連れ去られた。」

「それって、つまりー…」





「…ああ、敵はなんらかの理由で

"故意的"に

シカマルを攫ったのだと思われる。」





目的は初めからシカマルだろう

ただ単に木の葉の忍をおびき寄せる為の
人質に攫ったとは考えにくい

「そこでだ、」

「あー…大体話は掴めてきたぜ、
要するにシカマルを
奪還すりゃいいんすね。」

先程とは打って変わって
自信に満ちた表情で刃を見せて笑うキバは
この任務に対して俄然やる気を出した様だ

「ああ、帰還した二人に話を聞くと
シカマルを連れ去った奴らは四人組で、
相当のやり手らしい。」

木の葉の中忍三人が歯が立たなかっのだ

果たして勝算はあるのだろうか

「…四人組か。」

短時間で与えられた大量の事を
脳裏で一つ一つ整理していくネジ

恐らく

このシカマル奪還任務に配属される人数は
自分、キバ、チョウジ、の三人だろう

木の葉は今、人手不足が現状で
必要最低限の忍で里外の任務を
熟さなければならない

…綱手の情報に寄ると敵は四人、
更に人質とも言える
木の葉の輩を連れているのだとなれば
確実にこちらが不利になるだろう

「…ネジ。」

「…、はい。」

等と考えてるうちに
綱手から名を呼ばれ顔を上げる

「今回はお前が小隊長だ。
どう隊をどう構成し行動するも、
どう判断するかはお前に任せる。
…なんせ敵の情報が少な過ぎる、
無論、こちらも極力情報を集め調査するが
…まだ時間が掛かるだろう。」

「…情報が無い以上
敵は何するか解りません、
…急いだ方がいい様ですね。」

「ああ、頼んだぞ、ネジ、キバ、チョウジ。」

「「はい。」」

三人は一礼すると火影室を出ようと
綱手に背を向けた

が、その時





「「綱手のばーちゃん!!」」





バァン!とノックもせずにドアが開いて
剽軽な声がその場に響き渡った



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