鹿

-幸福論-
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(シカマルSide)



ー…こないだみんなで
焼肉Qに行ったのよー!

ー…へえ

ー…次はシカマルも
来れるといいねー…

ー…ああ、

ー…あ、そうだ、
今日任務何時に終わりそう?

ー…わかんねえ、
火影様は人使い荒いからなあ、





幸福論-変わらないもの-





今朝母ちゃんと親父に
「誕生日おめでとう」と言われた

ああ、そうかもうそんな時期か

今日は9月22日

俺の誕生日

人に言われて気付くくらい
無頓着だった

一つ歳を取ったなあ、
ぐらいしか感じねえし
別にこの歳になって
誕生日会を開いて欲しいとか
プレゼントが欲しいとは思わない

けどー、

任務報告書を出す途中
たまたまいのとチョウジに会った

思えば中忍になってからか
三人共忙しくなって
会う機会も少なくなった

チョウジの奴、また一段と太ったな

いのの奴は少し髪伸びたな

見慣れていたはずなのに
そんな変化が気付いてしまう自分に驚いた

そんなに会ってなかったか、

俺達三人は、餓鬼の時からいつも一緒で
親同士が仲良かったのもあるけど
何より一緒に居て落ち着いた

マイペースなチョウジは
俺のくだらねー話を相槌を打ちながら
隣でちゃんと聞いてくれたり
暇があれば外で
ねっころがって雲見たり

あれはあんぱん、あれはメロンパン
だとか雲の形をパンに例えて
日が暮れるまで空を眺めてた日もあった

それをいのに見つかって
早く帰らないと怒られるわよー!
とかめんどくせーこと言うんだけど
いのもいのでいつの間にか夢中になって
オレンジ色に染まる丸い雲を
本物のメロンパンみたい!とか
自分が1番はしゃいでたり

あの頃は平和しか知らなかった

平和が退屈だと思う時もあった

だけど里を守る戦争や
大切な人を亡くした今
平和が退屈だなんて
捻くれた理想でしかなかったんだ

定期的に同期の面々は
それぞれ忙しい時間を裂いて
たまに集まってるらしいが
俺は何故かいつもタイミングが悪いのか
任務やらで顔を出せないで居た

そんな話をいのとチョウジから聞かされ
正直いい気分はしなかった

「………」

俺達は成長するにつれ
すれ違っていく

いのは医療忍者を目指して
綱手様に弟子入りして

チョウジは別の隊で
副隊長を任されている

二人に会ったのは一ヶ月振りだろうか

つーか、まさかこいつら
俺の誕生日忘れてんじゃねーだろーな

一昨年の誕生日は朝一番に
いのとチョウジが
勢い良くうちに押しかけて
派手にしかも図々しくも
勝手に部屋の飾りやら装飾して
いのは母ちゃんとケーキ作って
次の日はわたしの誕生日だから!と
ホールケーキ2つ分作るんだけど
結局丸々1個チョウジが平らげるから
俺やいのの誕生日じゃなくて
チョウジの誕生日なんじゃねーか
とツッコミそうになったりして

去年はお互い忙しかったのもあるが
深夜遅くにいのとチョウジが
これまた図々しくも窓から入ってきて
一昨年より盛大ではなかったけれど
楽しい誕生日を過ごせた

思い返すと何だかんだで
誕生日は三人一緒に居て

だけど今年はどうだろう

顔を合わせたのにも関わらず
全くその事に触れられてない

いや、この歳になって
別に誕生日会開いて欲しいとか
プレゼントが欲しいとか
思ってねーけどよ(二回目

「じゃーね、シカマル」

「頑張ってねー!」

呆気なく二人は俺から
背を向けてひらひら手を振って去ってった



「………」



夕暮れ

ふ、と顔を上げると

いつの日かあいつらと見た
オレンジ色に染まる
メロンパンみたいな雲が
ぷかぷかと浮いていて

その光は俺を照らす



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