鹿

-俺と煙草と禁断症状-
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(シカマルside)





煙草は嫌いだ




煙りが目に染みるし
部屋中臭くなるし
キスする時は苦い味するし
抱き着かれた時の
服に染み付いた匂いはー…

まあ慣れたけど

「煙草一箱700円になるって。」

ふ、とテレビを付ければ
暴力事件だとか殺人殺傷事件とか
そんな物騒なニュースと共に
俺としては喜ばしい情報が飛び込んできた

「…おいおい嘘だろ!
こないだ440円に
上がったばっかなのによ。」

ソファーを独占し大胆にねっころがる
アスマの足の下で
俺は胡座を掻いて情報箱を眺めてた

「これからは節約の為に禁煙だな。」

「無理だ。禁断症状が起きる。」

「じゃあせめて一日一本な。」

「じゃあそのご褒美に一日一発だな。」

「…黙れ、変態。」

「お前、目上の尊敬する人に
向かって変態とはなんだ。」

「いや、尊敬してねーし。」

「生意気な餓鬼め。
成績下げてやろーか。」

「あんた教師として最低ーッて
おい、重いっ、乗んな!っー!」

まさかのまさかで大柄が
上にのしかかってきたかと思えば
強く抱き着かれて軽々持ち上げられた

そのままソファーに落とされて
気付は相手の胸の中にすっぽりと収まった

服に染み付いたアスマの煙草の匂いが
俺をしっかりと包んで、
ああ、俺の服まで
煙草臭くなっちまうじゃねーか

なんて口には出さないけど

「………」

煙草は嫌いだ

煙りは目に染みるし
部屋中臭くなるし
キスした時は苦い味がする

けど

「禁煙してほしいのか?」

「無理だろ。」

「してやろーか?」

「………しなくていい。」

アスマの背中に手を回して
きゅうっと力を入れた

煙草は嫌いだけど
禁煙は反対だ





染み付いたこの匂いが





あんたがここに居るって
安心させてくれるから





-俺と煙草と禁断症状-





あんたが居ないと

俺はきっと

禁断症状を起こす





end



(あとがき→)



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