振り

□一線はまだ遠く、
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今日で三回目。



けど多分、こいつわかってない。
なんで俺が休みさいて出かけるのか。しかも女子と。つーかお前と。
普通ありえないぜ?わかれよそんくらい。


「へへ。またかのうくんと遊べるなんて思ってなかったよ」

「ああ」

「電話もらったとき嬉しくってうまく喋れなかった」

「…」


そうだ。俺が最初誘った時もへんな喋り方になってた。あんときはまだましだったけど。お前、なんか蒸発しそうなくらい興奮してたよな。
ありゃけっさくだった。


「かのうくん?」

「ん?」

「ふふ。今日の映画そんなに楽しみなんだね」


俺…。思い出し笑いしてた?
…ださ、い。

緩んでた顔を慌てて戻したら、ななは首をかしげる。やめろ。

つーか俺、映画どうでもいいとか思ってんだけど。誘ったの俺だけど。お前が釣れて良かったよ。
前とかキャッチボールしたい言うからすげーびびったし。普通にトレーナーだったし。
今回はなんかまともにデート?デート?デートだよな?デートだから、服も真面目に選んできてて。悩む時間も楽しくて。
うん。勇気出して誘って良かった。まったく。


「何時からの見るの?」


俺を真っ直ぐみて話しかけてくるななを、直視できない。

くそ。
いろんなことが、どうどう巡りだ。


「あ〜。多分、昼過ぎ」

「あはは。じゃあ少し時間あるね」


甘い匂いしそうな髪をゆらして鞄を持ち変えるななになんか喉が、あつく、なった。


付き合ってるわけじゃないけど。
好きとかよくわかってないけど。
お前の私服なかなかだぜ、とか気の利いたことまだ言えないけど。
お前をこの距離に置いときたい。くらいは「好き」なんではないかと。思っていたりするんだが。

お前は?

お前はどう思ってんの?
たまに会う、くらいの「好き」を期待してもいいのか?



なあ…。
そんな無節操に笑ってんなよ。

食うぞ?












fin
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