丁寧に運んでくれたお粥とおさじを目の前にしてにやにやがとまらなかった。 「えへへ。はないくんのおかゆうれしいな」 「…」 はないくんはなんだか気まずそうに視線を伏せて少し赤くなっていた。はないくんときどきこうなるんだよねー。 普段大人びてるはないくんがとってもみじかに感じて。頭を撫でたくなるの。 「このまま食べちゃうね?」 わーい。わくわくするなあ! いただきまーすと言いながら鍋敷きをひっぱって自分の方に寄せる。はないくんが椅子に座るのを待っておさじを握った。 はないくんがなにか言った気がしたけど一口目! 「むっ!」 あつ! しまった油断したよ。自分が猫舌なの忘れてたよ。 口の中で熱いお米達と格闘してたらはないくんにお鍋を鍋敷きごととられてしまった。 わー!まずかったわけじゃないよ!熱かったからだよ!なんでとるの!?わたしまだぜんぜん食べてないよ〜。 なん、で?ってやっと聞いたら。 「混ぜたら冷めやすいし。さじかして」 おさじを受け取って小さな鍋を混ぜたりふーふーするはないくん。本当に優しいです。そこまでさせてしまってごめんなさい。 舌が痛い…。 いたーいいたーい。 「あついって言っただろ」 おお!わたし思ったこと声に出てたの!? は、恥ずかしいな。 だってはないくんがわたしのために、わたしのために!お料理してくれたんだよ?うかれずにいられますか?無理だよ! 思考をぐるぐる 少し混ぜて、ひとすくい。目の前にそれを差し出されてわたしは固まってしまった。 だ、だってこれよく言うあーんじゃないですか。 「…。食えよ」 「…ぁ、あ」 はないくん、普通にこういうことする人だったんだ。ど、どうしようすごく嬉しい。友達どうしでやるのとはわけが違うよ。すごくドキドキする。 あ、そっか。妹さん達がいるから、はないくんにとっては普通のことなんだね。そっかそっか。 よし、固まってるのも変だからた、食べてしまおう! 「い、いただきます」 ぱく、とおさじの頭とお粥を口に入れる。 おいしいなあ。あー。また泣きそうになってるわたし。だめだよ。この状態で泣くとかまたはないくん心配しちゃうからね。 口の中でお粥を転がして、おさじから口をはなそうとする。 あ、これなんかよだれ垂れそうだぞ!はないくんの前で絶対したくないよそんなこと! わー!いやー! 混乱してたら目が合ってしまった。 わっばれた?よだれ垂れそうになってるのばれた?はないくん目敏いからわ、わかっちゃったかなっ? はないくんが不意に目をそらした。顔が赤いな。…やっぱりわかっちゃったかな。 じゃなくてわたし今がチャンスだ。はないくん見てないよ! ちゅっ 思いっきり吸い込んだら垂れなかった。ああ良かった良かった。一安心だ。 落ち着いて飲み込んで、「おいしいよ」と感想を言った。はないくんのことだから、お粥においしいもまずいもねーよとか言うかなーと心の中で笑っていたのにはないくんはだんまりだった。 「はないくん?」 「わり、ちょっとトイレかりる」 椅子を引いて立ち上がるはないくん。鍋をわたしの前に戻して押し付けるようにおさじを握らせる。 不思議に思って見上げても目を合わせてくれません。 「じ、自分で食える?」 「えっ、うん。…大丈夫?」 「や、うん。別に」 も、もしかして、風邪うつって気持ち悪くなったのかな。早く食べてしまおう。それからはないくんに体温計渡してお礼たくさん言おう。 ありがとうっていおう |