振り

□だってクール
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あべくんと、手をつなぎたいの


泣きそうになりながら言って顔を上げたら、窓から差し込む夕陽を背負ったあべくんと視線がぶつかった。目を見開いて驚いたようにわたしを見るあべくん。
わ、わたしとんでもないことを言ってしまった。だ、だって教室で二人きりとか雰囲気すごくいいんだもん!言いたいことがかってにでるんだよ!あ、…あべくんクールだから、きっと呆れられてしまう。
ひ、ひえー。

付き合い始めてからもぜんぜん関係は変わっていない。たまに一緒に帰るくらいで、他は以前のまんま。まわりの友達とかは彼氏さんとすごく仲良しなのに、わたしとあべくんには本当に、なにもなくて。かわらなくて。だってあべくんは、クールなんだから。
でもね、不安も不満もないんだよ。
ただあべくんの手をかっこいいと思ったの。ごつごつした長い指に触りたいと思ったの。カバンを指に引っ掛けて持ち上げるときとかすっごくドキドキするの!
だから今日は手をつないで帰りたいと、思ったの。

どうしよう…。あべくん反応してくれないな。しかも無表情に戻ってるよ。相当呆れられてますか?
わー。もしかして睨まれてるのかな。視線がいたいよ。
耐えられなくて、あべくんから目をそらす。

「あ、あべくん…あの、」

「いいけど」

「…えっ」

言うが否やあべくんが近づいてきてわたしの手を取った。びっくりして固まっていたら、あべくんはにや、ととてもいじわるそうに笑ってわたしを見る。こんなあべくん、みたことない。

「俺もお前としたいことあんだけど」

「わっ」

手を引っ張られて前につんのめって、あべくんの体にぼすんとぶつかってしまった。慌てて謝ろうと顔を上げると、のぞき込まれていていてあべくんの顔がどあっぷになっていたっ。思いっきり身を引いたけど、あべくんの手が背中に回っていて出来ない。

「ああああべく」

「ん?」

「ち、ちかいよ」

「下向くなって」

あべくんはクールなのに、と言おうとしてまたあべくんをみたら、むせるようなきすをされた。




おわり
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