振り
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今日は、初めて泉くんの部活姿を見に行きたいと思います！
前一度見に行きたいなと言ったら帰りが遅くなるし邪魔になるからダメだと言われてしまったので今回は内緒です。
クラスの友達にも野球部見に行ったことがある子が何人かいて、聞く限りではみんなぜんぜん別人に見えるそうです。
わたしだって泉くんのそんな姿見てみたいです。
あといずみくんのクラスメートさんとか！
フェンス横まで来て、どこか隠れるとこがないか探しましたが、ありません。(うーん)
迷惑かける訳じゃないから、見つかってもたいしたことにはならないだろうと自分に妥協して、サード側で見ることにしました。
「マネジ希望のひとかな？」
後ろから声がしてびっくりしました。いきなり見つかってしまいました。振り向くと、髪の長いきれいな女の人がヘルメットを持ってひまわりみたいな笑顔で立っていました。
わたしは思わず「い、いずみくんを見にきました！」と本当のことを言ってしまい、しまったと思いました。
さっきまできれいな笑顔だった女の人がにや〜、と笑ってそうなんだ！と答えます。
「わたし、ここの監督なの。泉くんから聞いてるかな？」
わたしは首を横にふります。
監督さんがすごいとは聞いていましたが、まさかこんなきれいな女性だったとは！
「あの、いずみくんには来るなって言われたので内緒で来てるんです。隠れる場所がなかったからバレちゃうとは思うんですが、…その」
「そうなの？わかった。私からは言わないよ」
ニヒルに笑って泉くんたら照れ屋ね〜、ときこえました。
この人が監督さんだから野球部の人たちはあんな楽しそうなのでしょうか？
「あ、そうだ」
と、監督さんは思い出したように行ってどこかに走って行きます。
わたしは部員の人が来たのかと思ってフェンスの中を見ると誰か入って来ました。
遠くからだったけれど、泉くんじゃないのはわかったので、ホッとしました。
でも泉くんが来たら、二秒でばれるなーと思っていたら、監督さんがわんちゃんと上着を抱いて戻って来ました。
「見てるだけじゃ暇だと思うから、この子みててくれる？」
「えっ」
「お願いね！」
監督さんの笑顔と勢いにつられてわんちゃんと上着を受け取ってしまいました。
うわっ、わたしでいいのかわんちゃん！
そしてこの上着はなんでしょうか？
このわんちゃんの服…かな？
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