振りに

□あいのばくたん
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「オレさ。今日誕生日なんだよねー」

ヘラリと言われたのは放課後だった。練習着を着込んで肩におっきなリュックサックを背負って、いかにも今から部活でーす。と言った風貌の田島くんはわたしが書き途中の日誌に手を置いた。そうか田島くん、今日誕生日なんだ。

「おめでとう」

「あざす」

「…えっと、あったかな」

たしかサブバックに飴が入ってるはずだ。田島くん、イチゴ味とか好きかな。カバンを膝に置いて探ってみる。がさごそと探っていたら田島くんから視線を感じた。あれ、なんか、田島くん超見てる。ちょうみられてる。え、そんないいモノ渡すつもりじゃないんだけど。めっちゃこっち見てる。えっなんか顔についてる?さっきくしゃみしたとき、ちゃんと鼻拭いたんだが、え、なんか、え。
どうしよう飴あったけど顔上げられない。なんか垂れてたらどうしよう。ぅぉぉ。

「……」

沈黙がつらぁぁぁあい。なんでこういう時だけ静かなの!?いっつも元気じゃんか!まじでなんか付いてるのか!?
長いひとり押問答をしてしまった。そうだ、田島くん部活あるんだから、早く渡さなきゃ。



「ご、ごめん、あった!」

「おー」

「イチゴ味好き?」

「すき。ちょーすき。広瀬は?」

「わたしもちょーすき!はは…」


飴は田島くんの手に渡り、あっとゆう間に破られ口の中に放り込まれてしまった。急いでる時にスミマセヌ。口と鼻を袖で隠しながら「野球部頑張ってね」と視線を上げると、それはそれは、それは嬉しそうに笑う田島くんと目があった。

「ちょー好き。ゲンミツに」


田島くんがしゃがんでわたしの机に肘とあごをついた。カラン、と田島くんの口の中で飴が転がる音がした。どうやら相当お気に召したようだ、イチゴ味。良かった。わたしナイスチョイスだわ。田島くんハピバ!おめ!部活急がなくていいのかなと思いつつ、この飴の旨味について語りたくなってしまった。

「いやー最近女子の間で人気でさっ。わたしもいっとかねばと思ったんだよー」

「それじゃおれたち両想いだな」

「…うん?」

田島くんの言ってる意味がわからなくて首を傾げると、田島くんも首を傾けた。ゆっくりと、自分が言った言葉と、田島くんが言ったことばを反芻する。えっと。

瞬間、頭痛に似た感覚が響いて、カァっと顔が熱くなった。え、え。田島くん、つまりそれはどういうことだろうか。いやしかしわたしが予感していることと果たしていっちしているのだろうか。あれ。一致してなくても否定しておくべきなんだろうか…。…否定?訂正?すべき、なんだろうか。


「ち、違うよ!好きなのは飴の味ふぁふぉ」


言い切る前に、両手で頬を挟まれた。正確には顎を動かないように固定されたとゆうか、がしっと掴まれた。口が閉じれなくて、ほっぺ噛みそう。てかよだれが垂れそう。いや、そんな場合ではない。


「味って、これの?」


カラン。と、また音がして、田島くんが器用に飴を唇に挟んでみせる。わたしは頷こうとして、頭を抑えられていることを思い出した。田島くんの顔が、飴が近づいて来る。










愛の爆誕
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