「いや、ねーわ」 部活終わりの部室。明日の予定分の細けぇ確認のため、俺と花井で残っていた。栄口は姉貴のパシリとかで、まあいつもと同じ幹部ミィーティングだし、先に帰した。 2人っつーのもなかなか珍しく、話ついでに、花井の、まあからかい半分だが、聞いてみた。 例えばの話だ。広瀬がお前のこと好きだとするだろ?したらまあお前んち寄りつくのもわかるんだわ。やっぱなんぼガキの頃からの、所謂幼なじみでも、高校生なってまで男んちしょっちゅう上がんのはおかしいだろ。は?お前のお袋さんの話はしてねっつの。いや、あいつがね、なんでお前んちのマンションに足を向けるのか。え?今そういう話じゃねーの?つかさ、お前が浮かねー顔してっから俺がつまんねー話聴いてやろうとしてんのになんで苦笑いなんだよ。おかしいだろ。 …めんどくせー!! お前が、アイツに告りゃ 「それこそねーよ」 「断言かよ」 「なんで俺が」 いや、どーみてもお前広瀬のこと気にしてんだろが。は?じゃあなに?クラス違う広瀬の面倒みんのてめぇの部屋で散々愚痴聞くのもわざわざ遠回りして家まで送ってんのも全部、ただの腐れ縁、だっつーのか?え?花井、お前ヘタレにもほどがあんだろ。そんなんでよくまわせてんな主将。副主将だからって、部活以外の手伝いすると思ってんのか?しねーぞ俺は。 「あいつはさ、俺じゃあないんだよなぁ…」 伏し目がちにそうごちて、くしゃりと笑う。…んな顔してても、両想いじゃないと言い張るのだろうかこのお人好しは。さっさと浚わないと、どっかの田島とかにお手つきされっぞ。お前、そんなの耐えられんのかよ。それこそ部活に支障出そうだぞハゲ。 「じゃあどいつなわけ?」 「は?」 「や、正直俺からしたらフラグ立ってんのお前くらいだし」 「……」 情けない顔が無表情になる。その目は俺をちらりと捉えて、そのまま離さない。は?なに?この空気。 「…なんだよ?」 「…ふいー」 や、それ広瀬のため息うつってるから。 突っ込もうかと口を開きかけたら、花井がまたさっきみたいな情けない笑いをもらしてて、やめた。気づいてんのかコイツ。 がたん、と花井が荷物を肩にかけ立ち上がる。俺もつられるように立って、荷物をかける。重ぇわ。 |