振りに

□風邪ひきシリーズ
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さきが風邪引いたって聞いて、部活終わったあとすっ飛んで会いに行った。9時余裕で回ってたけどさきのおじさんは笑っておれを上げてくれた。
いつもは気にしない足音を、ちょっとだけ気にして階段を昇る。いつもはしてないノックも、一応してみる。
二回うって、五秒後。やっと返されたさきの声、鼻にかかってかれていた。

「俺。栄口に聞いて、来た」

「た、た、田島くん?」

「入っていい?」

「あ、ぇ、えっと。ちょっと待、って」


ドアの向こうで毛布とかベットのすれる音がした。さきが起き上がろうとしてるのがわかって、おれは返事を待たずにドアを開けた。
やっぱし上半身を起こそうとしているさきと目があって、さきの顔が真っ赤になった。


「あっ、あ、」

「別に起きなくていーのに。体つらいだろ?」

「で、でも…」

「あ!だから起きんなって」

「わた、しパジャマ…」

「おれたち素っ裸の付き合いじゃん」

それくらい気にしねーよ、て言ったらさきは耳まで真っ赤になって口パクパクさせた。ほんとのことだろ別に。お前なに着ても可愛いって。つーか着てなくても良いし!
あはは。なんか俺すげーお前にちゅーしたくなったぞ。

「も、もぅ…」

さきは困ったようにうつむいて布団を握りしめる。ベッドの横に膝をついて、さきを寝かせようと肩に手をかけたらびくっ、と震えた。気にせずにベットに沈める。顔が真下にあって思わずちゅーしたくなる。さきも真っ赤な瞳でおれを見上げて、物欲しそうに頬を染める。そんな顔すんなよ。
ぎゅ、とこらえて身体を離す。


「これ、今日の一組の課題とか」


「…たじ、」


「あとあいつのノートのコピー」


これ以上さきの顔見てたらヤバい。襲っちゃわないうちに帰ろ。置いてくもん置いて早々に立ち上がる。


「た、たじまくん」


呼ぶなよ、頼むから。そう思って拳を握っても、さきには届かなくて、もう一度おれを呼ぶ。つばを飲み込んでも視線を反らしても、だめだ。


「ふあっ?」


ふとんに右手を滑りもぐらして、さきの左足をつかみ、ちゅ、と足の甲に口を付けた。さきは一瞬びっくりしたけど、恥ずかしそうに「ありがとう」て笑ってくれた。









たえがたきをたえ、しのびがたきをしのび





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