振りに

□計画的誕生日
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帰り道、待つなっつってんのに待ってるさきを小走りで迎えにいく。背中に冷やかしの声を追い風に日の暮れた校門を目指す。俺の顔見たとたん、頭ひとつ低いとこにある顔が笑顔になって「委員会さっきまで終わらなかったよ〜」とかいわれて。わずかに色のない唇をみても、怒る気もうせる。いつものパターン、一緒に帰る日はいつもこうだ。



「は、はないくんっ」


十分くらい歩いた頃、さきが俺の手のひらくらいの紙袋を渡してきた。「おー、さんきゅ」と短く返して俺も紙袋をカバンから取り出す。やべ、ちょっとしわになってる。



「あ、あありありがとう!」


「なんだよ」



こっちまではずくなんだろと目を伏せたら下の方から「だって、…うれしいから」と消えそうにつぶやく声がした。さきの顔見たら目が合って、ちょっと泣きそうな笑顔で俺をみてた。やべーなーったく…。そんな顔…、すんなよなー。
ごまかすように貰った紙袋を開けたら、たたまれたハンカチみたいなのと手作りの御守りが入っていた。普通の御守りより少し小さめで「必勝」とフェルトが縫いつけてあった。


「勝の字がむずかしくて変になっちゃったんだけどが、がんばったんだよ!すごく!ほ、ほんとはこうゆうの公式試合の前につくるんだろうけどな、なななんとゆうかね、自分自身に勝ぁつ!的なね!」


照れてるのか純粋に焦ってるのか、身振り手振りも必死な感じでしゃべるさきがかわいくて。なんつーか、だめだな。俺今超くちんなかじゃりじゃりすんだけど。
立ち止まって、細っこい肩をつかんでキスした。いきなり引かれて抵抗するまもなくくっついた唇にさきの息をのむ音が聞こえた。でも聞かなかった振り。キスして6秒。まっかなさき、と多分俺も。



「来年は、俺も御守りにすっかな」


「…なん、の?」



「お前の学業成就」




「…!もっ、もう」




笑えないよと泣きそうな声に笑って、また目があった。おめでとうを言い合って俺達はもう一度キスをした。











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