振りに

□ふたりでひとつ
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不満そのいち。俺がちゃん付けで葵がくんで呼ばれてたこと。そのに。俺達が高校に入った途端鈴木さんと呼ぶようになったこと。どっちがどっちだ。そのさん。高校入ってスカートが短くなったこと。スカートは気にするくせにブラ線透けてんの気づいてねーとこ。そのよん。俺らの扱いがミリ単位で均一なとこ。そのご。俺の試合見に来て葵を誉めるとこ。キャッチャーってすごい頭使うんだよね!って微妙に野球好きな発言するとこ。そのろく。じーっと人の目をみる癖があるとこ。そのなな。ばかなとこ。そのはち。誰にでも笑うとこ。そのきゅう。俺を男だと思ってないとこ。そのじゅう。あげだしたらきりねーとこ。




「りょうちゃん!!あっくん!!遊んで!」

昔から俺は、お前が好きだった。俺達はお前が好きだった。双子だからとか考えたくねーけど、やっぱ良いモンは良いっつーか、感じること考えることは似ているらしく俺達は物心ついたときから、ちっこくてアホで優しいコイツにぞっこんだった。まあ十七年生きてきてまったく目移りしなかったてわけじゃねーけど、俺達の視界の端っこにはいつだってコイツがいた。
ガキのころは好きとかよくわかってなくて三人でずっと遊んでた。けど成長するにつれ、俺らはアイツの預かり知らぬところでギクシャクし始めた。いちお、つーかけっこう真面目にバッテリーだってのもあって、葵との間ではそれはみて見ぬ振りをし続けなければならないコトだった。見てみぬ振りっつーか、存在しないものっつーか、暗黙のなんとやらだ。冷戦とは少しちげーけど、似たようなもんだ。双子で、ひとりの女をとりあうなぞ、出来過ぎだ話で笑えてくる。実際笑えない。




「鈴木さん鈴木さん」

「お前それやめろ」

「だって、いちお先輩だもん!」

「いちおってついてる時点で尊敬の念いっこもねーよバカ」

「ひっ、ひどいよりょうちゃん!」

酷いのはどっちだ。知らない罪ってのを、俺は知ってしまった。俺達二人の間でのんきに笑ってるお前をいつか、身勝手な裁判にかける夢を見る。






むしろギロチンにかけてやりたい





 

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