振りに

□寝起き涙のリクエスト
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「ひぐっ!?」



放課後の教室。放課後と言っても夏期講習終わってからの時間だけど。阿部くんから「部会終わりに保健室よるから」、とメールがきたので待ってた。そうだわたし阿部くんを待ってたんだ。寝ちゃってた。…よだれたれてないよね?
堂々と寝ていたけどいちお阿部くんの席なので確認。とゆうか、阿部くん遅いなあ。遅くても五時半には来るって行ったのに。
静かな教室。この厳しい残暑をすこしもねぎらうことのない夕方のお日様。湿った空気が、またわたしの眠気を誘う。再び腕を枕につっぷしてみる。阿部くんの席からの景色は見慣れているはずなのに何故かあきない。ぼーっとするのにちょうどいい。そういえば阿部くんの夢を見ていた気がする。




「…だめ、」




このままだとほんとに寝てしまう。保健室行こう保健室。ガタリと椅子から立ち上がり、自分の荷物を持つ。軽い荷物だ。夏期講習のプリント、受験参考書。…阿部くんが毎日持っている野球部道具のなんぶんのいちだろうか。一緒に帰れる日は少なかったけど、いつもわたしの鞄まで持ってくれようとした。付き合いはじめの頃、わたしは想像していなかった阿部くんの申し出にびっくりして…固まってしまった気がする。自分の鞄だけでも重そうなのに…。
鞄につまってるのはスウェットやタオルや…それだけじゃない、と思う。たくさん練習した思い出思い入れも、詰まってたんだろうな…。


そこまで考えて。やめる。
すれ違わないとは思うけれどいちおうメモをおいて、保健室へ向かった。












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