西浦の入学式に髪の短くなった広瀬さんがいて、ひどく驚いた。驚くなんて、可愛いものじゃない。俺はまた、広瀬さんのために胸をしめつけられるのかと予感し、拳を握る。甘い期待など持てるはずが無かった。 どうせなら、広瀬さんとはもう会いたくなかった。苦しくなる一方だ。広瀬さんがくれる笑顔なぞ、おまけのようなものだ。優しい言葉や仕草だって、俺じゃなくても出来るのだ。 恨めしい。あの日の広瀬さんの思い出が、胸にびたりと張り付いて離れない。こんなに苦しいなら自分の気持ちに気付かなければよかった。 「腹いて…」 クラス割りを見に行ったら、自分の名前より先に広瀬さんの名前を探していた。ああ。違う。違うだろ俺。 「さかえぐちくん」 一年前と全く同じ、広瀬さんの笑顔だった。締め付けられる胸が警報をならす。 恋しく思ってはいけないと。 王子様なんかじゃない 高1、春 |