振り

□風になって小鳥の唄を運びたい
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俺は今目撃している。



ななが花井のこと好きだって、知ってた。気付いたときはすげぇビビって胸の内においとくのなんてできるわけなくて。ドストレートに聞いてしまった。


「お前、花井のこと好きなんだろ?」


ななは顔を真っ赤にして口をあんぐりあけてアホみたいな顔してた。でも瞳は真っ直ぐ俺をみてて。十分すぎる回答だった。
それからななの話を聞くようになった。てゆうかほとんど俺が聞き出してたんだけど。でもななは困ったような、嬉しそうな顔をして、あいつの名前を何度も何度も呼んだ。
ななが頑張って、初めて花井とはなした日、ななは俺に礼を言ってきた。俺、別になにもしてねぇけどな。
もともと危なっかしいとこのあるななを花井が気にし出すのにそう時間はかからなかった。しどろもどろしつつも頑張る姿が健気で、花井もまんざらでもない感じで照れたりしてた。
はたから見て明らかに両想いなのに、当人たちはその微妙な位置関係を崩したがらずにいた。そのそぶりで花井がななのこと好きじゃねんだったらと思うと、イライラしたけど。まあ花井にそんな器用さは無いだろうなとか野球みてて思った。
だーーっ!!ななもさっさと言っちまえば良いのに!断られる心配ねぇから!「や、俺今は野球部あるから」とか言われたら俺がぶっっとばして謝らせっから!!ついでに告らせっから!
お前の葛藤を俺が一蹴してやりてぇよなな。
もんもんとして放課後。ななにひとこと言いたくなって、俺はななの教室に向かう。
このままぐだってたらお互いこれに慣れちまってぜってーいいことねぇもん。踏み出せないまま繋がってるのたもつのなんて、馬鹿みてぇじゃねぇか。苦しいくらい好きなら吐き出せっつの。
ふと気づいて足を止める。




そして俺は今目撃した。








花井が、ななに告白しているところを。





風になって小鳥の唄を運びたい




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