振り

□隻眼の彼女は最期まで僕を視てくれなかった
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いきなりななが家に押しかけてきて、まあいつものことなので母さんにお茶を頼んで部屋に上げた。目をぱちっと開いたなながすわって膝を立てる。これもいつものことだけどパンツ見えそーだ。言うのも面倒なので視界に入れないようにする。俺ってななのこと大事にしてんなー。と思う。別に、彼女じゃないけどさ。



「田島くん田島くん、」

「んー?」



「ようこちゃんがね、」



「んー」




「サッカー部の人とお付き合い始めたの」




「ふぅん?」と、ぜんっぜん興味なかったけど振り向いてみたらななはついてないテレビを見てた。黒い画面にうつってんのはきょとんとしたななだった。


「もう一緒にお弁当食べれないかな?」


「…かもなー」


「はぁーあ」



寂しいそうとか悲しそうとか、そんなんぜんぜん感じさせない声色でなながしゃべる。なんつーの?棒読み?よくわかんねーけど、とにかく友達とられちゃった的な話なんかな。
ななはそれですっきりしたのか、出された麦茶とお菓子を食べながら、いつもみたく俺と話をした。ただ俺はずっとななを見てたけど。
じゃあ俺たちも付き合おーぜ!てノリとテンションで言いたくて言いたくてしょうがなかったけど、そんなんいつものことだけど、俺は今日もこらえるんだなこれが。
つーかノリとテンションで制服破きたくなったりもするんだがこれも耐えるんだな俺!すげー!
俺死ぬまで耐えられる気がする。つーか死ぬまでななは俺のこと好きにならないって確信があるっ。ゲンミツに!!



「たじまくんたじまくん」



無機質なななの声が酷く新鮮だった。







隻眼の彼女は最期まで僕を視てくれなかった





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