振り

□泉
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柔軟してたら田島があ、ななみだ、て言うからマジでビビった。
嘘だろ〜と思いながら目だけ動かして探したら、下向いて慌てるななみが…。
ホントにいた。

あのばか…っ。
くんなっつったのに。

お前学年一の天然ロリ巨乳て言われてんだぞ!
天然はともかくロリに巨乳だぞ?
しかもお前がつるんでる女子から発生したあだなでつか校内でそれ知らないのお前だけじゃねーの?(そこが一番たち悪い)

ほら、そうでなくてもちょーっと浮き足だってんじゃんうちの連中…(田島はオープンすぎ)。

どこにぶつけていいかわからん腹立たしさで、素振りもまともにできない。
モモカンに泉くん集中しなさーい、て何故かすごくいやな笑顔で注意された。肩に力はいンだよくそ。

ななみの奴あとでデコピンしてやる…。


ってまてまて。あとでってなんだよ俺、あとでって。最後までいたらいくら夏でも暗いしちったぁ寒いだろ。
今ちょっと行って帰れって言えば良いじゃん。
そうだ、そうしよう。


「監督、」


「あのこ、うちの仔みてくれてるのよ〜。助かるねぇホント」


「…」



モモカン…なんですかその超わざとらしい口調と表情は。
おもわず苦笑して、怯みそうになったけど俺は踏ん張った。


「や、でもたぶんアイツこのままほっといたら最後までいると思うんすよ」


「あら、いいじゃない。みんな気合い入ってるし」


それがなんかイヤなんですけどー。
駄目だ俺、全然いなされてるっ。
つか手が汗ばんでるっぽい。なんで俺がななみのために手ぇ湿らせてんの?


「っあの、」


「さっきジャージの上着渡したし、泉くんが家まで送ればいいでしょ?」


はーい戻って!と体を返されて押し戻される。
お手上げだった。つか完敗だった。
「練習あいま、邪魔にならない程度に声かけてあげたら?」とまた企みのある笑顔で囁かれて、喉が締まるのがわかった。

この人の布石は…完璧だ。





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