振り

□あずさのいちにち
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なんだろう。俺、あんま自分の誕生日とか今まで意識してなかったけどななみとつき合い始めてからはなんとなく、てか絶対ななみはなんかくれるんだろうなって思う。くれるってかくれるものだったりイベントにすげぇ悩むんではなかろうかと。
実際、ななみの誕生日は俺もなんかしたくて、いろいろ瞑想して迷走して巣山とか口堅そうな奴に相談してみたりして、うっかり田島にもらしたらすげぇのりのりで聞くに耐えないその、なんだ…下ネタをふられまくり試行錯誤の結果、ななみのうちでケーキを焼くという…俺は終始これでよかったのかと焦っていたがおめでとうってほんの、ちいさな、つぶやくような俺の言葉にななみは泣いた。俺よりも小さな声で「ありがとう」と泣いた。
彼氏として当たり前のことしてるつもりだったのに、そんなに喜んでもらえるとは思ってなくて、恥ずかしくて、嬉しくて、こっちが泣きそうだった。嬉し泣きしそうだった。
ああ。つまるところ、俺はななみが俺よりもあれこれ悩んで悩んで悩んでんじゃねーかと、期待している。俺はなんでも嬉しいけど、俺を喜ばそうと必死で模索しているななみを、期待している。

泣きながらケーキを口に運ぶななみを、俺はときどき思い出す。あ、のろけかこれ?
そんな感じで今夜も、俺は眠りにつこうとしている。


明日は俺の、誕生日。



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