落ち着け俺。 いや、うん。俺だけじゃないよ。巣山も驚いてるよ! なんでななさん寝てるのかなー?もう夜ですよー? 真っ暗ですよー? 巣山と目を合わせて、二人して呆然とする。 お互い考えてることは、多分一緒なんじゃなかろうか…。 …。 危なすぎだろう。誰か起こそうよ。 つかどんだけ爆睡してるの。 座ったままとか腰にきそーだな…。 あ、電気消えてたから先生たち気づかなかったのね。 友達とか…あ。あの人そんなことしないよね。 なんだかななさんペットみたいに扱ってるし。 「…どうする?」 「そりゃ…」 それは起こすけど、問題はそのあとだ。 起こすだけ起こして置いて帰ったら… ななさん、多分一人で帰えせない。 や、この夜道女の子一人で帰らせるわけじゃないけどさ。 方向どこか聞いてついていけばいいんだけど、うーん。 遠かったら時間かかるしなー。 「いちおみんなに相談してこ?」 俺みんなんとこ行ってくるから起こして連れてきてな、と言って巣山は走っていってしまった。 教室に取り残されてえー、と思ったけど、とりあえず起こすことにした。 「ななさーん」 呼ぶだけじゃ起きないだろうから、結構強めに揺すってみる。 けど返ってきたのは可愛らしい寝息だった。 …って俺可愛らしいてなんだよ! 違う違う!と自分を諫めて、もいっかい揺する。 や、起きるまで揺するけど。 うおーい。 「ななさーん。朝だよー。学校遅れるよー」 お母さんみたいなことを言ってみる作戦は見事玉砕して。 静かな教室の中、なんだか無駄に恥ずかしくなった。 なにしてんの俺…。 …………顔が熱いです。 って、ゆーか、 ななさんて、やっぱまつげ長いんだなー。 肌白いし、手首もげそうなくらい細いし。 手はちっさいげど指、結構しっかりしてるんだ。 あ、れ?指、まめだらけ…? よく見たくてななさんの手首を掴んだら、ななさんの目がうっすら開いた。 「栄口遅い!」 俺がびびるより先に、巣山が戻ってきた。 ななさんの、…あ、れ?すやまくんと、え、と…えぐちくんだ〜、となんとも間の抜けた声に脱力する俺だった。 (俺は栄口なんだけどな…) |