題名(C)確かに恋だった

□噛み癖が直んないね
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パチパチ。
数度まばたきして、大きな目でジッと見上げてくる。
何を、不思議がっているの。あなたは日本一の漫画を作る事に夢中で、私の考える話など、さっさと手放したいと思っているのではないの?
私を捨てたいのでしょう?

同業の彼らが家へ来て、持ち直した気持ちが再びしぼんでしまいそう。バカみたい。
緩くなった涙腺に負けないよう、眉間にグッと力を入れた。
反対に、頭に来るほど純粋しか映そうとしない彼の瞳がふいにふにゃりと細くなる。

「なーに言ってるですか。誰も秋名さんのこと、キライになんてなってませんよ。」

何がそんなに可笑しいのか。ケラケラと子供のように笑う彼にイラつきを覚える。そして、自分自身のこの気持ちにも。
一気に軽くなり、フワフワ宙に浮くような感じだ。
あぁ腹立たしい。こんな簡単な彼の一言で、

嬉しい。ホッとした。

なんて。

距離を詰めテーブルに乗り出し、元凶を見据えた。もはや睨みつける状態で。

「‥絶対もう一度、こっち向かせてやるんだから!」
「今まさに見てますケド?」
「そういう事じゃなく、ナチュラルの話です!面白いって、言わせてやる!」

彼は再びまばたくと今までのふにゃりとした笑顔とは違う、意味深な表情でニヤリと返してきた。
驚いて我にかえる。

「で、ではお先に失礼します。」
「えっ、秋名さん待ってくださーい。」
「初めにお電話したのは私ですし、ここの払いは私がしますのでっ。」

これ以上一緒に居たらまたペースを崩されてしまう。それは不愉快だ。
どうせ呼び止められたのも、映画とかなんだとか彼の気まぐれに付き合わせようとしているだけなんだから。

さっさと会計を済ませ、私は彼を置き去りにその店を後にした。



「‥たまには僕に相談くらいして良いですよって、言いそびれたです。」



20110730


気分転換+見たい映画があったのを理由にフツーにお誘いした新妻先生と、誘われ慣れてないためにアタフタしちゃった岩瀬さん。
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