題名(C)確かに恋だった

□なみだ色の海に溺れた・2
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勉強なんて、数学なんて、大嫌いですけど。
キミを独占できる口実になるなら、毎時間テストでも良い。
なんて思いました。



「新妻さん、そこ違います。2番の応用ですよ。一個前の手順に戻ってみて下さい。」

静かな、透き通るような声に聞き惚れないよう、俯き加減の長い睫毛に見惚れないよう、暗号が並ぶノートに集中する。
自分の勝手で、帰宅しようとした彼女をつき合わせておいて、聞いてなかったじゃどうしようもない。彼女は間違いなく怒る。そんな彼女も魅力的だけど。
…いや、やっぱりコワいかな。

「シャープなメガネに、タイトスカートのスーツスタイル、似合いそうです。」

「あなたは本当に突拍子の無い事を言いますね。今解いている数式に、どんな関連が?」

「女性教師のイメージです。秋名さん、教え方が上手なので。…ゴメンナサイ、やっぱり言わなきゃよかった。恥ずかしいです。」

「じ、自分で言っておいて‥!恥ずかしいのはこっちです!」

僕達を隔てる机を手の平でバンッと叩いて、彼女はそっぽを向いてしまった。
クールに見えるけど、本当は純粋でぶっきらぼうな照れ屋。その顔を赤くさせるのは、実は結構カンタンな事みたいです。

もっともっと困らせてみたいと思うけど、これ以上調子に乗ったら怒って帰ってしまうかも。
せっかくの二人きりの時間を自分の手で終わらせるのはバカげているし、傷つけるのも嫌われるのも有り得ない。

とにかく今の目的は、数式という暗号解読の方法を覚える事。
暗号を漫画で描きつぶしたい気持ちも強いが、首を振って数学問題集に集中し直した。



頭を捻りたおし、教えてもらった方法を駆使し、やっと答えを導き出すと、秋名さんはいつもの澄んだ声で「当たりです。」と呟いてくれた。



20101011




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