題名(C)確かに恋だった

□だから、泣くな
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彼女の長いまつげと泣きボクロを濡らして、透明な涙は次々溢れる。見た目にはしょっぱそうになんて見えない綺麗なそれは、細かい粒子のひと粒ひと粒にまであの人への慕情が詰まっているのだろう。

「福田さんは、わ、私をキライ。‥キライなんです。」

「取りあえず涙拭いて下さい。」

「う‥ごめんなさい。なんで、こんなに泣けてくるのか、自分でも‥。」

分からないんですという言葉は、嗚咽によってうまく聞き取れなかった。
蒼樹さんの気持ちは本人より僕の方が分かってるみたい。分かりたくなんてないですケド。

「そんなに悲しいなら‥、」

「‥?なんでしょうか?」

「‥福田さんは本気で嫌ってるわけでは無いですよ。だからそんなに泣くこと無いです。」

「そ、そうでしょうか‥。」

ハンカチとティッシュを握る蒼樹さんは、相変わらず涙を止められないらしい。
止められるのは彼だけなのか。
僕が抱きしめて頭を撫でても意味は無いのか。


(そんなに悲しいなら僕の所へ来れば良いです。)


だから、泣くな


口に出来ない言葉が鉛になって。



END

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