題名(C)確かに恋だった
□夢よりも甘い現実を
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新妻先生の自宅近辺の、ここはペットショップ。
(思ったよりもお客さん多いな。ちゃんと見つけてくれるかしら。)
お気に入りの膝丈スカートと新しいグロスをお守りに待ち合わせ中だが、緊張は増す一方。クラリとなった視界にティーカッププードル生後2ヶ月が目に入る。否応無しに口元が緩む。
ガラスを叩かないように指先でちょいちょいとちょっかいを出していると、後頭部を誰かにつつかれドキリとした。
「お待たせしました〜。お、蒼樹先生の髪とそのコの色同じですね。」
「‥‥お久しぶりです、新妻先生。」
後ろには数ヶ月ぶりに会うその人。あまり変わってはいないみたい。あぁでも右の髪に寝癖が。急いで来てくれたのかしら。
笑ってしまいそうになったので、コホンと咳で押さえ込む。
「さぁ、取りあえず外へ出ましょうか。1時間しかありませんし。」
「え〜、僕もワンちゃん見たいです。」
「‥わかりました。」
私が頷くと、嬉しそうにはじっこから見てまわり始めた。
ボストンテリアやポメラニアンの前で子供のように喜ぶ彼に、店員さんが犬を抱っこさせてくれた。
「うは〜!モコモコしてます。そして意外に大人しいです。」
‥‥‥‥‥相乗効果かしら。確かにあなたは年下だけど、今日は余計に無邪気だわ。カワイイなんて思ってしまう。
「はい、蒼樹先生も抱っこしてください。パス。」
彼の手からモコモコを受け取る。本当大人しい。そしてツリ目。新妻先生とは反対ね。
「ぐはぁ!カワイイです!」
彼は両手で心臓を押さえたあと、子犬ごと私を抱きしめた。
「〜〜〜〜新妻、先生、離して。‥子犬をビックリさせては可哀想よ。」
「はっ!ゴメンナサイでした。つい。」
離れてから周囲を伺うと、お客さんや店員さん、近くの犬達までもこちらを見ていた。
とても恥ずかしくなるが、新妻先生は鼻歌を口ずさみながらショーケースを見ているし、抱っこしていた子は何も無かったように私の手を舐めている。2人ともツワモノね。
「も、もう、外へ出ましょうか。」
「じゃあそのワンちゃんも連れて行きましょう。」
「ダメです。」
「はーい。」
店員さんに子犬を返し店を出た。平日のお昼過ぎの空は青く輝いている。
隣で彼はニコニコしながら可愛かったですね。と言った。
待ち合わせ前からのドキドキは止まること無く増すばかりだが、私は幸せな気持ちでそうですね。と返した。
(「蒼樹先生が笑ったです!」「わ、私より新妻先生のほうが笑ってます!」)
END
下の文章同様、2009年に作成したものです。